どう過ごしたいかによって
変わるチェア選び
変わるチェア選び
「もっと家を心地よくしたい」「インテリアをどうにかしたい」とお悩みの方へ。
「HOUSE」を、自分や家族にとって居心地のいい「HOME」に変えるヒントを、プロに教えて貰いませんか?
インテリア&フードスタイリストの岩﨑牧子さんに、家具や照明、ラグの選び方、小物の飾り方について教えて頂きながら、スタイリングを提案して頂きます。
家族や友人が集い、語らい、食事を共にするダイニングテーブル。それだけでなく、勉強をしたり、在宅ワークをダイニングで、なんていうケースもありますよね。自宅で最も長く過ごすのがダイニングという人も多いのではないでしょうか?家時間の多くを支えるダイニングテーブルとダイニングチェアは家具選びの中でもとりわけ重要になってきます。ソファ選びの時と同じように、まずはそこで「どんな時間を過ごし、どんなふうに使いたいか?」をよく考えることが大切です。自分たちのライフスタイルを顧みて、例えばリビングよりもダイニングで過ごす時間が圧倒的に長いのであれば、ソファよりもダイニングチェアに投資すべき。心地よく座っていられ、上質で長く愛せるダイニングチェアがあるほうが、幸せに暮らせますよね。
サイズ、座り心地などの機能性を満たしていること。大きな面積を占めるのでインテリア的にもキーアイテムであるということ。金額的にも大きな買い物になるので、選ぶ時は慎重に・・・。といった点に気をつけて。デザイン、色や材質などが空間・インテリアに合っているものを。そして、好き!と思える1脚をじっくり選びましょう。ダイニングチェアは、デザインだけでなく座り心地も大切なポイントです。できれば実際に座ってみて座り心地をチェックしてみることをおすすめします。
今回は1つのダイニングテーブルを軸とし、3通りのダイニングチェアの合わせかたを提案します。ベースとなるダイニングテーブルは「JULIE DINNING TABLE 1600(ジュリー ダイニングテーブル 1600)」。幅85cm、奥行き160cmの長方形で、チェアが4脚〜6脚置ける頃合いのサイズ感。素材はポプラ材で、木目が美しく、温かみのあるシックで落ち着いた色合いの、家族の成長とともに長く使って頂けるテーブルです。このテーブルを軸に、「どんな時間を過ごし、どう使いたいか?」によって、合わせるダイニングチェアを提案していきます。同じテーブルでも、チェアを変えると印象がガラリと変わります。ぜひ、ダイニングチェア選びの参考にしてみて下さい。
1つ目は最も一般的な、ダイニングチェアを全て同じデザイン、色で揃える例です。美しく、整った空間で、家族や友人と穏やかで心地のよい時間を過ごしたい。ベースとなるインテリアはなるべくシンプルに、長く愛せる飽きのこないものを選び、小物や照明で自分らしさ、個性を発揮したい、そんなかたにおすすめです。ダイニングチェアが揃っていると視覚的なノイズが減り、統一感が生まれるため、すっきりと整然として見えます。選ぶ色や素材にもよりますが、基本的にはきちんとした、シンプルで落ち着いた印象の仕上がりに。家族で過ごす親密な時間を支えてくれるだけでなく、少し改まってお客さまをもてなす時でも臆することなくお迎えできると思います。
同じ素材・色もしくは異素材を合わせる
木製のテーブルの場合、同じく木製のチェアなら木部の素材や色を合わせるのがおすすめです。もしくは、同じ木製でも黒やグレーに塗装されたものを選んだり、素材の全く異なるチェアを合わせるのもいいと思います。ダイニングテーブルで過ごす時間が長いなら、ぜひ座り心地にこだわって選びましょう。肘掛けが付いていれば、より寛いで、長い時間座っていられます。
木部はダイニングテーブルと同じダークブランのオーク材、座面と背もたれの一部にグレーのファブリックが張られたチェア。ファブリック部分がレザーのタイプもあります。絶妙にカーブした背もたれによって、包み込まれるようなホールド感があり、肘掛けつきのチェアのよう寛げます。硬すぎず柔らかすぎずない、座り心地のよさも魅力です。
「チェアのファブリック、ペンダントランプのシェード、ラグをグレーで統一し、食器は白で合わせ、シンプルでモダンな仕上がりを目指しました。濃いめのウッド色とグレーを合わせることで、より落ち着きのある印象になると思います。ゆったりと寛げる座り心地のいいチェアが、上質な時間をもたらしてくれるはずです」(岩﨑さん)
2つ目に提案するのは、あえて1脚ずつデザインや色などが違うダイニングチェアを合わせる例です。人がよく集まる家で、家族はもちろん、友人達とみんなでわいわいと食事やお酒を飲むのが好きというかたにおすすめです。スツールやベンチなども組み合わせれば、大人数が集まった時でもフレキシブルに対応できますし、各々が好きな椅子に座れる楽しみも。また、カジュアルでリラックス感のあるインテリアが好きというかたにもおすすめです。それぞれのチェアの個性が感じられ、躍動感のある楽しげなインテリアに仕上がります。椅子好きで1脚に選べない!というかたもぜひ。一度に同じものを数脚買うのではなく、好きなものを1脚ずつ、時間をかけて集めていく。そんな楽しみかたも素敵ですよね。
前述のコーディネートでも使用したボーマ チェアはファブリックの色違いを合わせ、それ以外はバラバラのチェアとスツールを合わせています。
ソリ チェアはスチール製の脚が軽やかなカジュアルなデザイン。座面がファブリックもしくはレザーなので、座り心地がいいのが特徴です。モード チェアは長く愛せる飽きのこないデザイン。ウィンザーチェアを彷彿とさせるオーセンティックなフォルムを、モダンに、シンプルに仕上げています。レザーの座クッションが付き、それを敷けば長時間でも快適に座っていられます。バラム スツールはシンプルで合わせやすく、軽くて持ち運びもしやすい。普段はリビングや玄関に置いて、来客時はダイニングでチェアとして、なんて使いかたもできそうです。異なるチェアを組み合わせる時は、木部の素材・色だったり、ファブリックの色だったり、どこかしらをリンクさせることでまとまりやすくなります。
「基本的に、チェアはダイニングテーブルと木の色を合わせ、座面のファブリックはブルー系で揃えています。ただし2脚あるボーマ チェアは、あえて1脚をグレーにし、スツールは座面がアイボリーのファブリックのものを選びました。どちらも木部の色は他と合わせています。そしてソリ チェアの脚の黒とリンクさせて、1脚だけ黒いモード チェアを選んでいます。こんなふうに少しずつ、どこかしらがリンクしていると全体に統一感が生まれてくると思います。揃いすぎているよりも、むしろあえて少しハズしてみるくらいのほうがおしゃれに、こなれて見えるかもしれません。1脚ずつ違う個性を楽しみながら、近い色や素材を集めれば、自然とまとまると思いますので、ぜひ参考になさって下さい。人の集まる家にはスツールやベンチを合わせるのもおすすめです。チェア以外の用途にも使えますし、ベンチはつめれば多めに座れますから。バラバラなチェアを合わせると、カジュアルで柔らかい印象に仕上がります。なので、こんなふうにモルタルなどのハードな素材の床とも相性がいいなと思います」(岩﨑さん)
3つ目は、ダイニングテーブルを仕事や勉強する場としてなど、多目的に使う場合のダイニングチェアの提案です。ダイニングを食事をする場としてだけでなく、昨今増えたリモートワークやオンライン会議、子どもの勉強スペースも兼ねて使っている人も多いと思います。そんなかたには、長時間、快適に座っていられ、オフィスチェアとして使っても良さそうなデザインの、さまざまなシーンを受け止めてくれるチェアを。例えば、肌触りのいい高級感のある素材を用いた、少しカチッとしたフォルムのチェアがおすすめです。
座面と背もたれに丈夫で柔らかなレザーを使用し、フレームには焼いたような風合いのオーク材を用いたチェアです。最高級の牛革を使用しているため耐久性に優れ、肌触りも滑らか。程よい弾力性があり、長時間座っていても疲れません。天然素材のレザーは、使い込むほどに馴染み、傷やシミも味になって経年変化を楽しめます。無駄のないシンプルなデザインだから、シーンを選ばず活躍。ひと目でわかる質の良いレザーと、オーク材の組み合わせは高級感に溢れ、座り心地も触感もよく、食事はもちろん、仕事や勉強をするチェアとしてもおすすめです。
「シンプルかつカッチリとしたフォルムで、高級感のあるブラックレザーを用いた、スタイリッシュなチェアを合わせました。レザーが柔らかくて長時間座っても疲れないから、ダイニングチェアと仕事用や勉強用を兼ねたチェアとしてもぴったりだと思います。また、自宅で使う仕事や勉強用のデスク&チェアを探しているのだけど、なかなかインテリアに合うものが見つからないという場合、ダイニングテーブル&チェアとして販売されているものから選ぶという手もあります。オフィス用チェアから選ぶのではなく、座り心地がよくてスタイリッシュなダイニングチェアから、選んでみるのもいいと思います。そのほうが家のインテリアに馴染みやすいかも知れません」(岩﨑さん)
数多あるダイニングチェアの中から、これ!と思える1脚を選ぶのは、なかなか難しいことですよね。ましてや、失敗した!と思ってもすぐに買い替えられるものでもなく。だからこそ慎重に。いつも自分や家族がダイニングでどんなふうに過ごしているか?またこれからどんなふうに過ごしていきたいか?を改めて考え、暮らしに寄り添い、暮らしをより豊かにしてくれるチェアを選んでください。できれば妥協せずに、時間をかけて1脚ずつ揃えていくくらいの大らかさで。チェアは座るという機能を持ちながら、オブジェのような造形美をも持つ家具です。この「フォルム、デザインが好き!」という気持ちも大切に。姿の美しい、お気に入りをじっくり見つけてみるのはいかがでしょう。いいチェアは、メンテナンスを重ねれば次世代まで使い続けられますから。
インテリア&フードスタイリストとして、雑誌、カタログ、広告など幅広く活躍する。大人っぽくエレガントかつ洗練されたスタイリングに定評がある。器好きで、作家の工房を訪ねたり、国内外で開催される食のイベントでスタイリングを手がけ、セレクトした器を販売することも。趣味でヴィンテージのカトラリーをコレクション。
撮影/川上輝明(bean)
スタイリング/岩﨑牧子
構成・文/鈴木奈代
アートディレクション/小橋太郎(Yep)