飾ることを楽しんで
自分らしい、心地のよい家に

TIMELESS INTERIORS・2023.08.25

「もっと家を心地よくしたい」「インテリアをどうにかしたい」とお悩みの方へ。

「HOUSE」を、自分や家族にとって居心地のいい「HOME」に変えるヒントを、プロに教えて貰いませんか?

インテリア&フードスタイリストの岩﨑牧子さんに、家具や照明、ラグの選び方、小物の飾り方について教えて頂きながら、スタイリングを提案して頂きます。

飾ることを楽しんで
自分らしい、心地のよい家に

今月からは家具選びの次の段階へ。まずはアートやオブジェ、小物、観葉植物などの飾りかたについての提案です。家を自分にとって居心地のいい場所、愛おしい場所にするために、つまり「HOUSE」を「HOME」にするために、家具や照明をひととおり配置したら、仕上げとなるのがデコレーション。それこそがインテリアの楽しみ、極意ですよね。住む人の「らしさ」や「個性」を存分に発揮できるところ。せっかくなら、飾ることを思いきり楽しみたいものです。

ここでは、リビングやダイニング、玄関で、食器や書類、日用品などを収納するサイドボードの上や周辺をどのように飾るか?を例に提案します。サイドボードなどの収納家具は、ものを収納する機能に加えて、ものを飾る場所としても大切な機能を果たしてくれます。

日本では昔から、和室の床間に掛け軸をかけ、花を飾り、季節ごとのしつらえを楽しむ習慣がありました。和室も少なくなり、生活がすっかり洋式化した現代では、床間に替わるしつらえの場がサイドボードやチェスト、T V台などの収納家具の上、というケースも多くなってきています。

サイドボードを活用し
簡単な飾りかたを提案

今回は1つのサイドボードを中心にして、小物やアート、グリーンの飾りかたを4案紹介します。ベースとなるのは「JULIE SIDEBOARD(ジュリー サイドボード)。1950〜60年代の北欧ヴィンテージ家具を彷彿とさせる端正なデザイン。ポプラ材とオーク材の2種類があり、同じデザインながら木質によって表情も異なります。ポプラ材は、まさにミッドセンチュリー期の家具を思わせる温かみのあるしっとりと落ち着いた佇まい。オーク材は、よりモダンで軽やか、現代の北欧家具やイタリアンモダン家具などにも合いそうです。合わせるアートや小物、観葉植物などによっても、サイドボードの印象が変わってきますので、ぜひ参考になさってください。

〈Coordinate 01〉

飾るときはアウトラインが
三角形になるよう意識

まずはサイドボードの上を飾る提案です。ものを置いていくだけなので気軽に実践できると思います。写真では、大きめなアート(この場合は額装したポスター)を主役に、周りに小物を飾っています。はじめにお気に入りのポスターを選び、額装します。そのポスターを中心に、それより少し高さの低いもの、写真の場合はテーブルランプと花器などを置いていきます。置く時は、アウトラインが三角形になるように意識していくとバランスよく見えます。写真のように中央に高さのあるものを置き、おおよそ正三角形になるようにしてもいいですし、どちらかの端に高さのあるものを置き、反対側に向かってだんだん小さくなるよう直角三角形をイメージして置いても。絵画や写真でよく用いられる三角構図は、インテリアにおける小物の置きかたにも効果的。安定感がありバランスよく見える方法です。ただ置いていくだけですのですぐに並べ替えもできますし、季節や気分によって置くものを変えて楽しむこともできますよね。多少いびつでもアウトラインがなんとなく三角形になればくらいのイメージで、大らかな気持ちで飾ることを積極的に楽しんでみてください。

Styling Points

「中央のポスターを主役に、高さと形の違うものを三角形になるように配置しました。ポスターも照明も花器も、それぞれをひとつずつ見ると個性の強いものたちばかり。そこに、後ろに飾った輪のオブジェや手前の石と丸いものを加えていくと、それらが繋ぎ役となり、全体がまとまります。アウトラインが三角形になっているのに、なんとなくまとまらない感じがしたら、この石のようなちょっとした繋ぎ役となるものを加えていくと上手くいくと思います。時々離れて眺めて、全体のバランスを見ながら置いていくことをおすすめします」(岩﨑さん)

〈Coordinate 02〉

壁にはポスターや鏡を
リズミカルに飾る

次はサイドボードの上の壁を飾って楽しむ例です。壁に飾ると言えば、真っ先に思い浮かぶのがアートです。世界に1点しかないようなアートはなかなか敷居も高いので、手始めに先の例でも使った、比較的手軽に購入できるポスターで壁を彩ってみるのはいかがでしょう。まずは「好きだな」「インテリアに合いそう」と思う気持ちを大切に、気に入ったポスターを選んでみてください。

写真では額装したポスターに加えて、鏡をリズミカルに掛けてみました。鏡も壁に掛けられるアイテムのひとつ。姿を映すという機能だけでなく、部屋の景色が映り込むことによって空間が広く見えたり、光を拡散するため、窓がない壁にもまるで窓があるかのような明るさや抜け感をもたらしてくれる効果もあります。ぜひ鏡を効果的にインテリアに取り入れてみてはいかがでしょう。

壁にアートや鏡を複数枚並べて飾る場合は、中心や下、上、左右など、どこかしらのラインを揃えるとすっきりと美しく見えます。写真のように、もっとランダムに飾りたい時は、まず中心となる1枚を決め、それを基準に、全体のざっくりとしたアウトラインが長方形や正方形になるように飾っていくと、収まりよくまとまります。

Styling Points

「壁にポスター、鏡、鳥のオブジェをランダムに掛けてみました。ポスターの額と、鏡のフレームはサイドボードの木の色と揃えています。四角いものばかりが並ぶ壁に、鳥のオブジェを加えて掛けることで柔らかさや躍動感をプラス。額や鏡だけ並べて掛けるのも整然として素敵ですし、こんなふうに動きのあるオブジェを組み合わせれば、少し遊びのある楽しげな雰囲気になります。壁がピンクベージュなので、ポスターには同色系やそれに合うニュアンス色が入った具象画を選びました。鳥もピンクベージュの壁に合うようゴールドを選んでいます。ここにはフレッシュな生花よりも、ドライフラワーの方がしっくり合うなと、サイドボードの上に壁と同色系のドライフラワーをラフに置いてみました。ドライフラワーがサイドボードと壁を緩やかに繋ぐ役目を果たしてくれています。壁にポスターなどと一緒に鏡を飾るのは、ダイニングやリビングはもちろん、身だしなみをチェックする玄関にもおすすめです」(岩﨑さん)

〈Coordinate 03〉

テーマを決めて
集めたものを飾る

3つ目は、少しステップアップして「テーマを決めて飾りましょう」という提案です。コレクションしているもの、お気に入りのものは並べて飾って楽しみたいですよね。1箇所にまとめて飾る場合は、テーマ性を持たせるとおのずと統一感が生まれて美しく見えますし、眺めるのも楽しくなります。

写真は「透明なガラスと白いもの」というテーマでサイドボードの上に飾った例。壁のオブジェも含めてさまざまな素材の白いもの、形の異なるガラスのものを集めて飾っています。飾る時は前述の通り、三角形のアウトラインを意識して。写真の場合は、壁のオブジェとサイドボード上のものとがおおよそ大きな直角三角形になるように配置しています。こんなふうに色や素材や形状など、何かしら共通項のあるものを集めて飾ってみると、たとえ1つ1つには特別な強さがなくても、全体が1つのオブジェのように見えきて、強い存在感を放ちます。色を統一した場合は、できるだけ形や素材感の違うものを並べること。揃いすぎていると面白みにかけるので、あえて暮らしの道具や海で拾ってきたような自然のものを混ぜてみたり、ちょっとはずして遊んでみるのもおすすめです。

Styling Points

「『透明なガラスと白いもの』というテーマで飾ってみました。テーマがあると形状や素材が違うものを並べてもまとまって見えます。ガラスが硬質なので、白いものは自然素材や立体感のあるものも加え、柔らかさを出しています。珊瑚や糸などあえて素材感の全然違う白いものも加えてみました。この場合は白だけ、ガラスだけより、両方混ぜたほうが面白いと思います。白にガラスを加えることで抜け感が生まれますし。さまざまな素材や形状が混ざれば混ざるほど見た目の面白みが増していくと思うので、いろいろ加えて楽しんでみて下さい」(岩﨑さん)

〈Coordinate 04〉

観葉植物も取り入れ
もう少し広範囲を飾る

最後はサイドボード周りの飾りかたです。壁に穴を開けられない、大きすぎたり重すぎて壁に掛けられない場合は、アートやポスターを床に置いて飾るのも手ですよね。サイドボード横の床に置き、高さやボリューム、色合いを考えながら周りに観葉植物やスツールなどを置いていけば、ちょっとしたコーナーになります。サイドボードの上のしつらえが完成したら、今度はそれと繋がるように横にコーナーを作っていく。こんなふうに少しずつエリアを広げて飾ることを楽しんでいけば、家じゅうが素敵になっていきます。

観葉植物もインテリアにおける大切なアイテム。命ある生き物なので、きちんと育てる覚悟を持って取り入れる必要がありますが、生花と同じで、加えると途端に空間が生き生きとして見えます。それぞれの観葉植物に環境が合っていることを大前提に、葉形や葉色、大きさなどを考えながら、高低差をつけて配置していきましょう。高さのバランスは、スツールやテーブルの上にのせたり、脚付きの鉢に植えたりすることでも調節できます。

Styling Points

「サイドボードの横のスペースと床を使って、もう少し範囲を広げて飾ってみる提案です。インパクトのある大きなアートやポスターを室内に取り入れると、とても見栄えますし、かっこいいですよね。壁に掛けようと思うとハードルが高くなりますが、床置きなら気軽に実践できます。床に座った時の視線でも楽しめるのでおすすめです。今回は大きなポスターを主役にして、その両サイドのサイドボード上とポスターの横に観葉植物を置き、あいだをスツールで繋げるイメージでスタイリングしてみました。額の色やスツール、鉢などに黒を取り入れることで全体を引き締めています」(岩﨑さん)

好きなものを飾って愛しみ
日々の暮らしを心豊かに

家、インテリアは家具や照明だけでなく、アートや小物、そして観葉植物などが入って完成します。お気に入りのもの、旅先で出会ったもの、家族から受け継いだものなどを飾ることで、家がより愛おしく、居心地のいい場所になっていきます。そして、その人らしさが感じられる唯一無二の空間になっていくのです。今回提案した簡単なセオリーは、あくまでヒントです。あまり堅苦しく考えずに、ぜひ好きなもので家をしつらえ、飾ることを存分に楽しんでみて下さい。

スタイリングを提案してくれたのは
岩﨑牧子さん

インテリア&フードスタイリストとして、雑誌、カタログ、広告など幅広く活躍する。大人っぽくエレガントかつ洗練されたスタイリングに定評がある。器好きで、作家の工房を訪ねたり、国内外で開催される食のイベントでスタイリングを手がけ、セレクトした器を販売することも。趣味でヴィンテージのカトラリーをコレクション。

撮影/川上輝明(bean)
スタイリング/岩﨑牧子
構成・文/鈴木奈代
アートディレクション/小橋太郎(Yep)