食べるの大好き。料理はそんなに得意じゃないけど、ワインやビール片手にチャチャッとおいしいものを作りたい。そんな方に贈る『プロに教わる!おいしいの法則』。
教えてくれるのは、三軒茶屋にあるシンプルで食べ飽きない料理とナチュラルワインが人気のイタリアンレストラン「ブリッカ」の金田シェフ。
「気分がアガるイカした道具を使って、手軽においしい料理を作りたい!」とお願いしたところ、「見た目はもちろん機能もばっちり! の道具とおもてなしにぴったりの料理」を紹介してくれた。
staub(ストウブ)
ブレイザー・ソテーパン
フランス生まれの鍋・ストウブは、一流シェフにも愛されている鋳物ホーロー鍋です。鋳鉄は熱を均一に伝えるため熱の当たりがやさしく、素材のおいしさを上手に引き出してくれます。最大の特徴は、蓋の内側についている突起=ピコ(ブレイザー・ソテーパンの場合は「システラ」)。加熱することで染み出た素材の水分が、ピコ(またはシステラ)を伝わって食材に降り注ぐため、うまみを逃しません。蓄熱性も高いため、鍋ごとテーブルに出してもいつまでもアツアツを楽しめます。今回使用した「ブレイザー・ソテーパン」は、浅型で底が広いため食材を炒めやすく、アクアパッツァやパエリアなど彩りよく具材を並べる料理にも適しています。
炒める、ゆでる、煮る。3つに適している!
そのままテーブルに出せるビジュアルも◎
今回紹介するのは、アクアパッツァとパスタを組み合わせた料理。名付けて、金田風ペスカトーレ! 「材料を焼きつける」「パスタをゆでる」「煮る」の3つプロセスを経て作るんだけど、ブレイザー・ソテーパンはこの3つのどれもに適しているんだ。まず、深さ7㎝と浅めなので、食材を焼きつけやすい。次に、蓋が重く密閉度が高いため、少ない水分でパスタをゆでることができる(つまり、水分が少なくてすみ、食材の濃厚なうまみを味わえる)。最後に、蓋にシステラと呼ばれる突起(ブレイザー・ソテーパンのドーム型の蓋のために改良されたもの)がついているので、食材から出たうまみを凝縮した水蒸気が雨のように食材に降り注ぎ、ふっくらジューシーに仕上げてくれる。この3つが1つの鍋で叶うなんて! この料理のためだけに揃えても損はない、といったら言い過ぎかな。
アクアパッツァパスタ
材料と作り方(4人分)
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パスタ(スパゲッティーニなど) 300g
魚(金目鯛や真鯛など) 1尾(250g)
あさり 300g
ミニトマト 200g
にんにく 3かけ
オリーブ油 大さじ4
塩 適量
ハーブ(ディル、セルフィーユ、イタリアンパセリなど)、オリーブ油(ex.) 各適量
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*小さじ1=5㎖、大さじ1=15㎖、1カップ=200㎖です。
① 材料の下ごしらえをする
あさりは3%の塩水(分量外)に1時間ほどつけて砂抜きし、殻をこすり合わせて洗う。魚は塩小さじ1/2(魚の1%)をふり、5分ほどおく。ミニトマトは半分に切る。にんにくはつぶす。
〈おいしいの法則①〉
あさり、ミニトマトはアクアパッツァのマスト素材。あさりのだし、ミニトマトの酸味とうまみがおいしいスープを作るよ。ミニトマトなど小さな食材を切るときは、小回りが利くペティナイフが断然便利。中でも、Homelandのは小さいながらも切れ味バツグン。柄尻部分に小指が引っかかるので、手にしっかり馴染む。一度使ったら手放せない、代物です。
② パスタを折る
スパゲッテーニは長さ3等分程度に折る。両手でパスタを持ち、パキンと折るだけ。
〈おいしいの法則②〉
少ない煮汁で煮るとき、パスタが長いままだとうまく浸らない。そのため、3等分くらいに折ってボウルに準備。木目の美しいイタリア・アルテレニョ社のオリーブウッドのボウルやパスタメジャーは、あると料理したい気持ちがムクムクと湧き上がるアイテム! パスタはサンミゲルのパスタジャーにストックしておこう。
③ 魚の表面を焼きつける
ストウブ鍋を熱し、オリーブ油を入れて煙が出るくらいまで熱したら、魚を入れて弱めの中火で焼く。にんにくを加え、魚に焼き色がついたら返し、もう片面も色よく焼き、取り出す(にんにくは鍋に残す)。
〈おいしいの法則③〉
魚は焼きつけてから煮るのがコツ。香ばしさがプラスされ、魚の生臭みも出ないと一石二鳥なんだ。魚を返す時には、アルテレニョ社の木のトングの出番! 菜箸のように食材を傷つけることなくやさしくつかめるよ。何より、木のトングってあまり見かけないから、特別感があってなんだかうれしい。
④ パスタをゆでる
③の鍋に水2と1/2カップ(500㎖)を加えて強火にかけ、沸騰したらパスタを加え、ゆでる。
〈おいしいの法則④〉
魚を焼きつけた鍋に水を加えて沸かし、その湯でパスタをゆでるのがポイント。魚から出たうまみを残さずパスタに吸わせるよ。
⑤ 魚を戻し、あさり、トマトを加えて煮る
再び沸騰したら③の魚を戻し入れ、あさり、トマト、塩4gを入れ、ふたをして中火で7~8分煮る(スパゲッティーニの袋の表示よりも少し短めの時間、煮る)。
〈おいしいの法則⑤〉
あさりのだし、トマトのうまみもパスタに十分吸い込ませよう。ストウブは密閉度が高いため、短い加熱時間で素材に火を通してくれる。野菜の甘みを引き出し、その甘みを逃すことなく鍋中を循環してくれるから、素材のおいしさを十分味わえるというワケ。
半熟卵とトレビスのサラダ
材料と作り方(作りやすい分量)
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卵(Lサイズ) 4個
トレビス 1/2個
A
|マヨネーズ 40g
|からすみパウダー 10g
|レモン汁 大さじ1
塩 少々
オリーブ油(ex.)、からすみパウダー(あれば) 各適量
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① 小鍋に熱湯を沸かし、卵をそっと入れ、7分30秒ゆでて半熟に仕上げる。氷水におとして殻をむき、半分に切る。
② トレビスはせん切りにする。ボウルにAを入れて攪拌させる。
③ 器にトレビスを盛って塩を振り、Aを8箇所にポタッとおき、その上に①のゆで卵をのせる。オリーブ油をかけ、からすみパウダーを振る。
年末年始のごちそう続きで、そろそろやさしい味の料理が食べたくなる頃。おもてなしとはいえ、体にスーッとおいしさが染み込むようなアクアパッツァとパスタを合わせた料理が喜ばれます。そもそもアクアパッツァは魚介と野菜から出たスープが何よりおいしいと思っていて、そのスープを余すことなく味わうためにはパスタを……と最初からパスタを入れちゃうことにしたんだ。合わせるのはマヨネーズベースのソースをかけたサラダ。ウフマヨの僕なりのアレンジです。トレビスを使い、からすみパウダーをかけたら、手軽なのにおもてなし仕様になりますよ。
魚介のだしが利いたパスタと、からすみやトレビスのしっかりした味わいが重なるサラダ。うまみがふんだんに詰まった2品には、南イタリアのぶどうで作ったしっかりとした味わいが際立つワインをセレクトしました。新春の華やぎに合う、ラベルデザインも目を引く3本です。
金田真芳(かねだ まさよし)さん
「Bricca(ブリッカ)」&「Però(ペロウ)」オーナー兼料理長。都内イタリアンレストラン数店に従事し、2010年三軒茶屋にイタリアンレストラン「Bricca」開店。小学校のころからラーメンの”味変”を楽しむなど料理に興味津々。高校卒業後、料理の道へ。「イタリアンをベースに、自分の興味に素直に、自分が食べたい作りたい料理を作っていきたい」と語る。著書に『うち飲みワインのおいしいつまみ』(Gakken)がある。
熊本千絵(くまもと ちえ)さん
ワインストア&ワインスタンド「Però(ペロウ)」ソムリエール。都内イタリアンレストランでサービスに従事し、2020年より「Però」スタッフに。ワインは全く飲めなかったが、「飲める」「体が受け入れる」ワイン……自然な環境下で育ち、ケミカルなものに頼らず醸造したもの……との出会いからナチュラルワインの世界へ。「ワインは体に負担なく飲み進められるものかどうかが大切な気がします」。
もっと詳しく知りたい方は…
人気のナチュラルワインにも造詣の深い三軒茶屋のイタリアン『Bricca』の金田真芳シェフによるレシピ本『うち飲みワインのおいしいつまみ』(Gakken)販売中です。
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撮影/上端春菜(bean)、よねくらりょう
構成・文/飯村いずみ
アートディレクション/小橋太郎(Yep)