国を越え対話で育まれる

「フランジパニラタン」の美しいアイテム

Pickup Product・2022.8.19

日本では昔から、夏になるとラタン(籐)で編んだ椅子や枕が登場し、暑い季節を心地よく過ごすアイテムとして愛されていました。

現代では季節関係なく、ナチュラルテイストなインテリアアイテムとして通年で使用されるようにもなりましたが、ファッションアイテムとして活躍するバスケットや、ランチョンマットなどはテーブル上で涼やかさを演出してくれる雑貨として、やはり夏に需要のピークを迎えます。

 今回ご紹介したいのは、細いラタン繊維を繊細なテクスチャで編み込んだ日本のブランド「Frangipani Rattans(フランジパニラタン)」のアイテム。これまでの「ラタン」のイメージを一新するようなデザインで、スタイリッシュな空間にもフィットするこのブランドの成り立ちや想いについて、代表の森さんにもお話をお聞きしました。

繊細な編みが美しく丈夫で使いやすい涼やかなアイテム

「Frangipani Rattans(フランジパニラタン)」は、ランチョンマットやコースター、テーブルまわりの小物の他、ダストボックスなどインテリアのアイテムなど、幅広いラインナップがあるラタンブランドです。

 その魅力は、なんといっても繊細な編み。さまざまな編み方によって作られる凹凸や網目の大きさで表情豊かに模様が描かれ、そのものをしばらく眺めていたくなるほど。そして、ラタンという素材の軽やかさが、夏の暮らし空間に涼やかさを届けてくれるのも嬉しいところです。

ラタンは、ヤシ科の植物。東南アジアや中国にもよく見られる植物ですが、地域によってその特徴や用途は異なります。このブランドで使われているのは、カンボジアとベトナムの一部にしか自生していないルピア種。しなやかで水に強く、現地では魚の水揚げにも使われると言いますから、「フランジパニラタン」のアイテムもとても丈夫なのです。

 また、虫の発生を防ぐために、原材料の時点で煮沸と天日干しを行い、その後も生産しているカンボジアで出荷前に1度、日本に届いて各店舗に出荷する前に1度、合計2度の洗浄と検品を行なっているそう。安心して使うことができるよう、きめ細やかなケアがされているという点でも、自信を持っておすすめしたいアイテムです。

職人の高い技術を生かし、その価値を保つために

このブランドは、日本のブランドでありながら、生産は東南アジア諸国に囲まれ、海と山に恵まれた国、カンボジアで行われています。中でもこのラタン製品が作られているのは、首都プノンペンからバスで6時間程、世界遺産である遺跡群「アンコールワット」を有する自然豊かな、シェムリアップ州の郊外にある小さな3つの村。輸出されるラタンバスケットの約8割がここで生産されているというほど、農業と共にラタン製品の生産は、この村にとって一大産業なのです。

「フランジパニラタン」の誕生のきっかけは、代表である森さんが、大学在学中にカンボジア農村の貧困について調査をし、農業と共に大きな収入源となっていたのがラタン製品の生産だったと知ったこと、そしてラタン製品の生産者が抱える課題に気づいたこと。森さんは、当時を振り返ってこんなふうに話します。

「当時、カンボジアで生産されていたラタンは、お土産品として販売するためにタイに輸出されていました。サイズや品質に統一感がなく、日本でインテリア商品にするのは難しいというのが正直な印象。また、生産者は商品の価格を決めることもできない上、毎月決まった数の注文を受けることができないため、収入が安定しないという問題も見えてきました。しかし、実際に現地を訪れると、職人さん一人ひとりのスキル自体は非常に高く、誠実に期待に応えようとみなさん一生懸命。サイズや品質の管理をきちんと行い、協力しながら事業を成り立たせることができれば、日本でも販売できるのではないか、もっと彼らの技術を生かし問題を解決に導くことができるのではないかと考えました」

構想から6年、2017年の春にサンプル制作をスタートし、現地で出来上がりをチェックすると、その品質の高さに驚いたと森さんは言います。「もっとこの商品を日本に紹介していきたい」。その強い想いで、同年の夏にはオンラインでの販売がスタートし、ブランドとしての大きな一歩を踏み出しました。

職人を大切にしたいから、対話し柔軟に対応する

ここ数年は、コロナ禍でなかなか現地に出向くことはできない状況。その中でも、現地の責任者を通して職人さんとは密にコミュニケーションを取りながら、生産を続けてきたそう。コミュニケーションの内容は、直接的な仕事のことに限らず、職人さんの状況や要望まで幅広く聞きたいと森さんは言います。

「コロナ禍であるかどうかに関わらず、職人さん達が健康と家族を優先できているかどうかは、常に念頭に置いています。ですから、現地の責任者には、生産の状況だけでなく彼らの状況や要望を細かに報告してもらっています。『出産をするからたくさんは作れないから、自分のオーダー分を母や妹に回せないか?』『腕を痛めてしまったから、大きな商品ではなく小さくて腕に負担のないものを作らせてもらえないか?』など、日々さまざまな相談が寄せられますが、今生産してもらっている腕のいい職人さんたちには、これからも無理なくこのブランドのアイテムを作り続けて欲しいと考えているので、要望には柔軟に対応したいと思っています」。

一方で、ブランドとして心から満足していただけるようなクオリティを保っていくには、日本のお客様の期待しっかり応えてもらうことも大切。なぜ基準を守る必要があるのかを根気良く伝え続け、品質の基準や数量などを守って生産できるよう、現地の責任者が職人さんに寄り添いサポートし続けていると言います。

お客様からいただいた言葉や写真などは、できるだけ現地の責任者に送り、職人さん達に共有してもらうことも心がけているそう。「お客様がよろこんでいる姿や感謝の言葉が原動力になるのは、職人さんたちも同じですから」と森さん。このブランドを一緒に作り上げるチームとして、職人のみなさんを大切にされている温かい気持ちが伝わってきます。


最後に森さんは、このブランドについて、こんなふうに語ってくださいました。

「職人さんたちは、一生懸命に丁寧に、こだわりを持って生産にあたっています。心を込めて作られた商品を通して、日常のふとした瞬間にお客様に優しさや温もりを感じていただけたらと思います。私たちはブランドを立ち上げてから、彼らと共に商品へのこだわりや想いを共有し合いながら、ゆっくりと歩んできました。新商品など新しいチャレンジをする時には、不安を乗り越えて努力してくださる職人さんに勇気をいただきながら、ブランドを育んで参りました。これからも、少しずつですが全国のお客様に商品をお届けできるように、職人さんたちをトレーニングしたり生産体制を整えたりしながら、温もりある商品をお届けしたいと思っています」。

ちなみに、ブランド名にもなっている「フランジパニ」とは、カンボジアの寺院などに咲く花で、天使が宿ると信じられている植物の名前。アイテムのイメージにも通じる「ひだまり」や「上品な美しさ」を花言葉に持ちます。この事業があたたかく見守ってもらえるように、という願いを込めて付けられたのがこのブランド名だそう。

職人の方々によってひとつひとつ心を込めて作り上げられ、愛にあふれた「フランジパニラタン」の製品。販売する私たちも、その想いを大切にお客様に届けられたらと、あらためて感じています。毎日の暮らしに風通しのいい心地よさを感じさせてくれる「フランジパニラタン」のアイテム。ぜひ、その美しい品々を毎日の生活に取り入れていただきたいと思います。