季節感溢れるオシャレな料理、忙しい人にも寄り添うレシピが人気の料理家のワタナベマキさん。日々、気持ちよく食事を作るには、お気に入りのキッチンツールが欠かせないといいます。そこで道具好きのワタナベさんに、タイムレスコンフォートのオリジナルキッチンツール「Homeland」で作る、世界の料理をリクエスト! 第一回目は「米炊き釜で炊くご飯」です。
Homelandとは?
「使い勝手の良い、長く使いたいもの」をコンセプトに、タイムレスコンフォートが提案するキッチンツールブランドです。日本各地に昔から伝わる技術を継承している職人たちと対話を重ねながら、今の私たちのキッチンや食卓にフィットする道具や器を形にしています。さりげないけれど、一度使うと手放せなくなる。そんな道具作りを目指しています。
土鍋でご飯を炊こう
新米の季節到来! ということで、今回ワタナベさんが作ってくれたのは、日本が世界に誇る炊きこみご飯です。「土鍋で炊くご飯に憧れはあるものの、なんとなく難しそう……」と思っている方もまだまだ多いので、土鍋ご飯歴の長いワタナベさんにその魅力と使い続ける理由を聞いてみました。「土鍋は熱伝導が低く、温度の上昇がゆるやか。遠赤外線効果でじわじわと米に熱が加わるため、米の甘みとうまみを十分引き出され、ふっくらと炊けるのです。しかも、炊飯器よりも炊き時間が短いのも魅力のひとつです」。
Homelandの米炊き釜
日本六古窯の1つである信楽焼の窯元「松庄」さんと作った、米炊き釜です。堆肥物を多く含んだ土で作る信楽焼の温かな風合いはそのままに、シンプルなデザイン、持ち手のないコンパクトなフォルムにこだわりました。色は信楽焼の定番ともいえる飴色のほかに、土鍋では珍しいスカーレット色(緋色)の2色展開です。「私の道具選びのポイントは、長く使えて、自分で育てる楽しみがあること。どちらも兼ね備えているこの米炊き釜は、まさに私好みなんです。おこげが上手にできるのもうれしい。家族みんながおこげ好きで、取り合いになることも(笑)」
忙しいときこそ! の炊き込みご飯
今回紹介してくれたのは、ワタナベ家で人気の炊き込みご飯2種です。
「季節の素材を使った炊き込みご飯は、手軽に作れる旬の味覚です。加えて、実は忙しいときのお助けご飯でもあります。これさえあれば、おかずをあれこれ作らなくても満足できますから」。
宮城県の郷土飯です。さけといくらのハーモニーがたまらなく、いつも食べ過ぎてしまいます。さけを炊き込む作り方もありますが、魚自体もおいしく食べたいから、煮汁で煮たら取り出し、蒸らすときにのせる方法にしました。
材料(2~3人分)
米 2合(360mL)
生ざけ 2切れ
いくらのしょうゆ漬け 30g
A
|昆布 5cm角1枚
|水 2カップ
|酒 大さじ3
|薄口しょうゆ 大さじ1
|塩 小さじ1/2
しょうがの搾り汁 1かけ分
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*小さじ1=5mL、大さじ1=15mL、1カップ=200mLです。
① さけの下ごしらえ
さけは塩小さじ1/2(分量外)をふって15分ほどおき、熱湯を回しかけ、水けをペーパータオルで拭く。
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Maki's Point
「さけに塩をふってしばらくおくと、余分な水分が表面に出てきます。その中には魚の臭みも含まれるので、熱湯で洗い流します。このひと手間で、おいしさが引き立ちます」
② さけを煮る
鍋にAを入れて30分ほどおき、中火にかける。煮立ったら①を入れ、再び煮立ってから5分ほど煮て火を止める。さけ、昆布を取り出し、煮汁は冷ます。
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Maki's Point
「煮汁が煮立ったら、さけを軽く煮ます。ここでさけに軽く火を通し、煮汁にさけのうまみを移します」
きのこご飯も秋になると食べたくなる料理の1つ。米だけでもおいしいですが、もち米と米を半々にしてもちっとした食感も楽しめるご飯にしました。ぎんなんをプラスするとより季節感が出るだけでなく、独特の食感がクセになります。
材料(2~3人分)
もち米、米 各1合(180mL)
鶏もも肉 300g
しいたけ 4枚
エリンギ 2本
ぎんなん 10個
ごま油 小さじ2
A
|水 1と3/4カップ
|酒 大さじ2
|薄口しょうゆ 大さじ1/2
|塩 小さじ1
いり白ごま 適量
準備
・もち米は洗い、かぶるくらいの水に3時間浸す。米は洗い、ざるに上げる。
① 具材を切る
しいたけは石づきを落とし、放射状に6等分に切り、軸は薄切りにする。エリンギは長さを2~3等分に切り、縦に薄く切る。鶏肉は表面の水けを拭き、2cm角に切って塩少々(分量外)をふる。ぎんなんは鬼皮を除いて下ゆでし、薄皮をむく。
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Maki's Point
「鶏肉の脂が苦手な方は、取り除いても。また、肉に塩を振って軽く下味をつけておくと、肉自体の味がぼやけません」
② 具材、米を炒める
土鍋にごま油を入れて中火で熱し、鶏肉を入れて炒め、表面の色が変わったらきのこを加えて炒める。全体に軽く焼き目がついたら、米と水けをきったもち米を加え、油がなじむまで炒める。
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Maki's Point
「鶏肉やきのこを炒めると、コクが出て、味わいがボリュームアップします」
マキ流 おいしい土鍋ご飯の炊き方
① 米を洗う
米を計量してボウルに入れ、水を注いで軽く混ぜ、手早く水を捨てる。これは米の表面の汚れを取るための作業。
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Maki's Point
「米を洗った最初の水には、米の表面の汚れも含まれます。米は乾物なので水をぐぐーっと吸ってしまう性質があるため、米の汚れを含んだ水を吸い込まないよう、手早く行うのがコツです」
② 洗う
流水でやさしく米を洗う→ざるに上げる→ボウルに移して流水で洗う、を3回くらい繰り返す。
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Maki's Point
「ギュウギュウ研ぐと、米が割れて粘りが出てしまいます。指先でやさしく混ぜるように洗うくらいで大丈夫」
④ 水加減する
好みにもよりますが、水は米の1割増しを目安に。
・米1合(180mL)なら水は200mL。
・米2合(360mL)なら水は400mL。
・米3合(540mL)なら水600mL。
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Maki's Point
「新米は水分を多く含むので、水けをきったらすぐに炊いてOK。新米でない場合は、冬なら15~20分、夏は10分ほど浸水させてから炊きます」
⑤ 強めの中火にかける
強めの中火にかける。蓋の穴から蒸気が勢いよく出てきたら、弱火にして12分加熱。最後に強火にして15秒加熱する。
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Maki's Point
「最後に強火にするのは、水分をほどよくとばし、香ばしく仕上げるため」
⑥ 蒸らす
火を止め、15分ほど蒸らす。
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Maki's Point
「ご飯を炊くときの手順を表した「赤子泣いても蓋取るな」は、この”蒸らし”のプロセス。しっかり蒸らすと余分な水分がとび、米の甘みや粘り、香りが出てきます」
ワタナベマキさん
1976年神奈川県生まれ。夫と長男と猫2匹と暮らす。グラフィックデザイナーを経て、2005年に料理家として活動を始める。日々食べるものをおいしくていねいに作るのが信条。素材の味をシンプルに引き出す料理、素材の組み合わせに定評がある。ライフスタイルに憧れるファンも多い。現在は、テレビ、雑誌、オンライン料理教室など幅広く活躍中。著書は『マキさんの極上シンプルおにぎり』(ワン・パブリッシング)、『毎日のおかずはシンプルがいい』(エムディエヌコーポレーション)、『ほったらかしでおいしい! 蒸し料理』(Gakken)など多数。
https://maki-watanabe.com
Wa&_ (ワンダー)
wa&_(ワンダー)は、現代版“にっぽんの味”を料理家ワタナベマキが提案するブランドです。"日々の食卓に、小さなワンダーを"をテーマに、世界各地の料理から受けたインスピレーションを繊細な和のテイストにアレンジしてお届けします。
撮影/竹内章雄
構成・文/飯村いずみ
アートディレクション/小橋太郎(Yep)