[Homeland ブランドストーリーvol.3]

Homelandが目指すもの

Column・2022.07.12

盛り付けた料理や着る人が 美しく見えるものを作りたい

-もの作りについて聞いてきましたが、ひとつひとつのアイテムの「Homelandらしさ」はどんなところにあるのでしょうか。

玉置 器でもエプロンでも、使い勝手や着心地が良いことはもちろんですが、器ならまず料理とその食器が調和するかどうか、エプロンならそれを纏った人がその空間にマッチするかどうか……ということを一番に考えているところでしょうか。デザインが立ちすぎて、料理やその人自身が美しく見えない、ということにならないよう、なるべくシンプルであること、素材の良さが引き立っていることを心がけています。もの自体よりも、あくまで料理や人が主役になるように作っていくので、形を決めていく際には「削ぎ落としていく」という作業が多いかもしれません。

永井 もの作りの本質のところや、工場での様子を見ていくと、「いや、このデコレーションはいらないでしょう」という部分が見えてくる。それを排除していく作業を突き詰めると、「Homeland」としての雰囲気が揃ってくる気がします。

玉置 そうですね。色に関しても、食材を引き立てられるような色みにこだわっています。というか、正直こだわるところが多すぎて、ひとつのものが出来上がるのにもとても時間がかかります(笑)。今ちょうど目の前にオーバルのお皿がありますが、このお皿は和食にも洋食にも合うようにと考えて作ったもの。ですから、箸だけでなくナイフやフォークを使う場合のことを考えた硬さになっています。大きさや楕円の幅も、狭い日本の食卓に置いて映えたり、邪魔にならないサイズを意識していますし、お皿全体のデザインも、ただ平べったいのではなく、縁にかけて少し高くなるよう傾斜を作って、料理が立体的に見えるようにしているんです。そうするとより美味しそうに見えますから。アイテムのディテールを決める際には、「stillwater」内でもたくさん話し合います。誰かひとりの意見を通すというより、みんなで話しあって全員が「うん、これだったら」と納得する形を探っているんですよね。覚えている中で一番意見が分かれたのは、エプロンの色を決めたときでしょうか(笑)。「Homeland」は、基本的にアースカラーというか、あまり奇抜な色ではなく、自然の中にあるようなナチュラルな色展開が多いのですが、エプロンに関してはややカラフル(笑)。そこではこれらの商品を売ってくださる店頭スタッフさんの「こんな色があったほうがいい」という意見などもお伺いしましたね。

永井 自社製品をきちんと自分たちの手で売れることも私たちの強みですね。そこは、販売促進を担当してる髙橋さんが詳しいです。

髙橋 ありがとうございます。もの作りの現場と、実際のお客さまを結ぶのが私の役割です。

思いがきちんと伝われば お客さんに受け入れられる

-キッチンツールブランドである「Homeland」は、ECショップとともに「TIMELESS
COMFORT」のショップでも販売していますね。

永井 志を持って作ったものも、それをお客さまに伝えることが出来れなければ、良さを感じてもらうことはできません。その点、店頭で「なぜこれなのか」を丁寧に説明してくれるスタッフがいることは、もの作りをする者にとって大きなメリットだと感じています。

玉置 そうですね。例えばお皿の色合いにしても、生産者さんからは「1点1点、色の出方が違ってしまうのはいいのですか?」と聞かれますが、「TIMELESS COMFORT」のお店のスタッフが説明して、その場でお客さんに選んでもらうので大丈夫ですよ、と言うと「それなら安心して作れるぞ!」と、職人さんのエンジンもかかるんです。もの作りの過程を店頭できちんと説明して、クレームにならないような売り方をしてもらえることは本当にありがたいことです。

髙橋 私の場所からは店頭の様子も、玉置さんたちがもの作りをしている様子も両方見えますから、できた商品をどうスタッフに説明していくか、お客様に向けてどう提案していくかは常に考えています。同時に、店頭スタッフからの声をフィードバックする役割もあります。「鍋の季節は取り皿やお椀があったほうがいい」とか、「あともう1つこんなものがあれば、ギフトセットとして提案できるのに」みたいなことですね。また、私の立場では、他社の営業さんなど外部の方とお話する機会も多いので、社内だけでは出てこないような視点や意見もなるべく受け止めて、共有できるようにしています。

永井 作ることに夢中になってしまいがちですが、それだけではダメだということを教えてもらっています(笑)。

髙橋 立ち上げから2年近く経ちますが、やはり自社製品があるというのは、私たちにとっても大きなことだと感じます。自分でも使ってみるので実感がありますし、それで感じた自分たちの意見が反映されることもあるので、「一緒に作っているんだ」という意識がみんなに芽生えていますね。実際、スタッフに丁寧に商品説明をしたら、その翌日からそのアイテムがすぐ売れ出した、ということもあって。ものの背景をよく知って伝えることができれば、お客様にも受け入れられるんだと思います。

玉置 一度、六本木のミッドタウンで「Homeland」を紹介するイベントをやっていただいたことがありましたね。地方の生産者さんたちもみんなお呼びして。あまり時間がない中、髙橋さんたちの完璧な準備で、それぞれの工場さんたちのバックグラウンドにもスポットを当てた、とても素敵な展示になっていました。もの作りの道具や、製造過程で出るオガクズまで展示したりして、ちょっとした博物館みたいな雰囲気。生産者さんたちも喜ばれて、張り切っていろいろ協力してくださいましたよね。お客さんと直接お話できる機会もなかなかないので、とても有意義な時間だったと思います。それに、一緒にやったら、こんなふうに華やかな舞台で紹介してもらえる、ということは、きっと作り手の皆さんにとっても励みになったんじゃないかと思います。

髙橋 そうだったら嬉しいです。関わる人たちが幸せであることは私たちにとっても願いです。

好きな道具に囲まれることで 「食」への意識が高まって欲しい

-最後に改めて「Homeland」に込めた思いを聞かせてください。 

玉置 「Homeland」は直訳すれば「母国」という意味です。このブランド名には、「日本のものづくり」と、「自分の家を(好きなものに囲まれた)ワンダーランドにする」という、2つの意味を込めているんです。丁寧に作られた「Homeland」のキッチンツールを使い始めることで、1回1回の食事が楽しくなって、「じゃあ丁寧に料理を作ろう」と思えたり、「料理する時間が充実する」と思えたら、それが一番嬉しいことだなと思っています。

髙橋 キッチンや食卓は毎日使うし、長時間いる場所でもありますよね。

玉置 はい。だからこそ、好きなもの、愛着のあるものに囲まれていることが大切だなと。好きなものや道具に囲まれていたら、自然にその場所が好きになるし、料理することや食べることが好きになれると思うんです。

永井 外食を否定するわけではなく、「食」に興味を持つきっかけになればということなんですよね。

玉置 そうなんです。どちらにも良いところがありますから。 

髙橋 確かに自分で料理するようになると、外で食べたときも、「これ、どうやって作るのかな」「家でも作ってみようかな」と思うようになりますよね。それで実際に作ったあとにまた食べに行ってみると、外食のありがたみを感じます。

玉置 そうなんです。「食」を深める良いきっかけになるんですよね。お気に入りのものの力はとても大きいと思います。信楽焼の土鍋でお米を炊いたお客様の中には「もう電気炊飯器はやめます」とおっしゃる方もいますし、琺瑯の蒸し器を使った方の中には「電子レンジをやめます」とおっしゃる方もいました。便利な電化製品を否定するつもりは全くありませんが、それでも私たちが作った道具がきっかけになって、ふだんの食卓のあり方や生活まで変わっていく……そんな誰かの力になれるようなものを生み出す仕事には喜びもやりがいも感じます。

永井 このブランドには、スタッフ含め本当に女性の底力が集結している気がします。これからもう少しアイテムを充実させられたら、いずれは海外にも持っていって、日本のものの良さを知ってもらえたら嬉しいですね。日本は本当にももの作りの国だと実感します。まだまだお伝えしたいことがありますが、また別の機会にお話させていただければ。これからも良いものを作っていきたいと思っていますので、どうぞ楽しみにしていてください。

開発中の信楽焼きの陶器たち。
秋ごろ販売開始予定です。