私たちが日々使う日用品であるタオル。その背景にもそれぞれのストーリーがあります。それを知るとぐっと愛着が湧き、急に愛おしく感じられたりもします。世界中から綿を選りすぐり、真摯に丁寧にタオルづくりに取り組む会社、渡辺パイル。手がけるこだわりのタオル、そしてそれにまつわるストーリーをご紹介します。
渡辺パイルは、今治タオルで有名な愛媛県今治市に、1963年に創業したタオルメーカーです。大切にしているのは「素材の良さを最大限生かしたものづくり」。そして「使って気持ちのいいタオルづくり」です。素材となる綿は世界中から選りすぐり、目指すタオルのイメージに最適なものを使用。ひと言で綿といっても、産地によってその個性はさまざま。それぞれの個性を最大限生かした製品をと、あえて綿の産地を明記しているのも渡辺パイルならではのこだわりです。さらに、製造過程においても環境や人にもやさしい加工方法を心がけています。


とかく生産効率の良さを求めて織機の高速化ばかりが求められる中、渡辺パイルでは、あえて昔ながらの低速の織機で丁寧にタオルをつくることも続けています。写真は今では珍しい今治製のシャトル織機。1963年の創業当初は今治のたくさんのメーカーでも使われていました。しかし、より生産スピードが求められるようになるにつれ、織るスピードが遅く、人による作業も多くて手間のかかるシャトル織機は高速織機と入れ替わり、どんどん姿を消していったのだとか。渡辺パイルは高速織機に加え、シャトル織機も大切に使い続け、それぞれの個性を生かしたタオル作りをしています。
綿の個性を生かした3種のタオル
渡辺パイルのタオルの中から、タイムレスコンフォートが扱うのは3種類。綿そのもの個性を生かしてつくられたタオルやタオルケットは、ちょっと触れてみただけでも、驚くほど肌触りや質感の違いを感じられます。
触ってみると、思いのほか地厚。パイル生地の密度がギュッと詰まっていて海外のホテルにあるようなしっかりと頼もしい感じの厚み。でも地厚なタオルにありがちな、ごわつく感じは全くなく、肌触りはとてもふっくらとして柔らか。「SHUTTLE 1963」はそんなタオルです。名前の通り、今では珍しい今治製のシャトル織機を使い、ゆっくりと丁寧に織られています。低速で人の手間をかけて織っていくことでしかできない、密度が高く目の詰まった、そしてふくよかなタオルに仕上がっているのです。綿はアメリカ・カリフォルニア産のサンホーキン綿の長綿を使用。サンホーキン綿は他の綿よりも白いのが特徴。その綿を用い、糸を作る過程で白い綿と染めた綿を混ぜ合わせ、完全に混ざり合う前に糸にひくことで、自然と色が混じり合った特別な風合いとなり、ニュアンスと奥行きのある美しい杢グレーに仕上がっています。色はチャコールグレーとグレーの2色。使い込むほどに肌に馴染む質感となり、大切に育てて、変化していく経年変化を楽しめるタオルなのです
とにかく優しくて柔らかく、そして肌にしっとりと吸いつくよう。疲れて心がささくれだった時もこのタオルに顔をうずめたなら、癒されること間違いなし。まるでシルクのようななめらかな触り心地のタオルです。「なめらかバンガロール」の名前の由来は、インド・カルナータカ州、バンガロール地方で採れるオーガニック農法で育てられた綿を使用しているから。品質が高く、希少なオーガニック綿の中でも、長くて細い超長綿と呼ばれるものを選りすぐっています。綿の繊維が長いゆえにパイルの繋ぎ目が少なく、加えて繊細な糸をなるべく撚る回数を減らして甘撚りに仕上げているため、こんなにもなめらかで、ふんわりと空気を含んだ柔らかい肌触りになるのだとか。色は、オーガニック綿そのままのナチュラルな生成り、そして安心安全な酵素で漂白した清潔感のある白の2色です。
まるでスヌーピーに出てくるライナスの毛布みたいに、愛おしさを感じられるタオルケットが「MELANGEシングルケット」です。ふんわり軽く、とびきり優しい肌触りのこんなタオルケットにすっぽり包まれたなら、幸せな気持ちでぐっすり眠れそうです。150×200cmというたっぷりとしたサイズで、就寝やお昼寝のタオルケットとして、ソファやアームチェアでくつろぐ時の膝掛けとしてもとても便利。小さいお子さんとの外出時にも1枚持っていると重宝します。綿は「SHUTTLE 1963 タオル」と同じ、アメリカ・カリフォルニア産のサンホーキン綿の長綿を使用。糸を作る過程で白い綿と染めた綿を混ぜ合わせ、完全に混ざり合う前に糸にひくことで、自然と色が混じり合った特別な風合いとなり、奥行きのある美しい杢グレーのグラデーションが実現しています。色はチャコールグレーとグレーの2種類。昨今、国内でこのような広幅のタオル生地を織ること自体が難しくなってきているのだとか。大きいぶん、より軽く、そして洗いやすく、乾きやすくするために、こちらはレピア織機と呼ばれる織機を使って織り上げています。軽やかに包み込んでくれ、心までゆるりとほどけそうなタオルケットです。
お手入れについて
丁寧に心を込めて作られたタオルを、より長く、気持ちよく使い続けて頂くために、洗濯時に気をつけたいことがあります。良質で繊細な綿で作られたタオルを守るためのヒントです。

洗濯時に気をつけたいこと
布製品の風合いを柔らかくするために用いられる柔軟剤には、油分が含まれているため、使用することでタオル本来の吸水性が損なわれやすくなってしまいます。また、毛羽落ちの原因になることも。長く使い続け、硬くなってしまった場合には使用して頂いても問題ありませんが、なるべく使用せずに素材本来の柔らかさをお楽しみください。
蛍光増白剤や塩素系洗剤は汚れを落とすのではなく素材を漂白することで汚れを隠すものです。タオルの綿糸は天然繊維ですので、これらを使用することにより素材を傷つけ毛羽が落ちやすくなってしまいます。
タオルは引っかかりやすいので、マジックテープやファスナーの付いたものと一緒に洗濯する場合は、洗濯ネットに入れて洗濯することをおすすめします。さらに摩擦に弱く、傷つきやすくもあるため、乾燥機はできるだけ使用しないほうが、長く風合いを保てます。干す時は日陰干しがおすすめです。
使うほどにふっくらと育つ
干す前や畳む前にタオルを振ると、パイルが立ち、空気を含んでよりふっくらします。上述したように丁寧にお手入れして使って頂くと、購入時に比べ、使うほどに驚くほどふっくらと膨らみ、写真のように育っていきます。もちろん、毎日のように洗濯するものなので、全てを実践するのはなかなか難しいと思いますが、ぜひ参考になさって下さい。


丁寧に作られたタオルで暮らしに潤いを
タオルは毎日使い、直接肌に触れるもの。だからこそ、安心・安全で、心から気持ちいいと思えるものを使いたいものです。心を込めて丁寧に作られた渡辺パイルのタオルなら、触れた瞬間に幸せな気持ちになり、日々の暮らしを心豊かに潤してくれます。
渡辺パイルのタオル
撮影/よねくらりょう
構成・文/鈴木奈代
アートディレクション/小橋太郎(Yep)