料理家・ワタナベマキさん

居心地のいい、自分空間の作り方

Comfort LIFE with...・2024.02.22
料理家・ワタナベマキさん

居心地のいい、自分空間の作り方

Comfort LIFE with...・2024.02.22

オシャレで手軽な料理はもちろん、素敵な暮らしぶりにもファンが多い料理家のワタナベマキさん。自宅で雑誌や書籍の料理撮影を行うことも多く、ほとんどの時間を家で過ごすといいます。そんなワタナベさんに、心地よい空間を作る秘訣を伺います。第一回目のテーマは「リビングダイニング」です。

自分が居心地よくいられるのが一番。
好きなものを飾り、気分を上げています。


 いつ訪れても、気持ちいい空気が流れているワタナベさんのご自宅。開放感たっぷりのリビングダイニングは清々しいという言葉がぴったりです。ついつい長居したくなってしまうほど。
「リビングダイニングで心がけているのは、家族全員が心地よいと思える空間作りです。そのための家族のルールが、テーブルやサイドボードの上にはなるべく物を置かないこと。テーブルや棚がすっきりしているだけで、部屋全体が片付いて見えるんですよね」。
 毎日のように料理撮影が行われるキッチンとリビングダイニングは、ワタナベさんにとっては仕事場でもあります。緊張する撮影だって少なくはないはず。心をほぐすため、落ち着けるためのインテリアの工夫はあるのでしょうか。
「目の届くところには、自分の好きなものを置いています。逆を言うと、好きなものしか置かない! 自分で自分の機嫌をとらないとって(笑)」。
 好きなもの。ワタナベさんの場合は、壺やグリーンがそれ。部屋のいたるところに大きな壺やグリーンがたくさん! 壺はオブジェとしてだったり、枝や花を活けたり。キッチンを見渡すと、小さな壺には塩や梅干し、みそ。梅シロップのような保存食を入れたり。
「旅先でも気に入ったものを見つけると、ついつい……。気づいたら、こんなにたくさん集まっていました。作った人も土地が違っても、”土もの”という共通点があると自然となじむ気がします。その他、ガラスも好きですね」。   
 好きなものに囲まれて過ごす。確かに一番手っ取り早く、気分よく暮らすワザかもしれません。

テーブルは、オーダー先でいくつもある木材の中からオーク材をセレクト。「以前使用していたテーブルがウォールナット材だったので、雰囲気を変えるためにもオーク材を選びました。ナチュラルな明るい色がいいかなって。オーク材特有の「虎斑」と呼ばれる帯状の木目も気に入っています」。
撮影が終わったら、テーブル周りで猫のハットリくんやハナちゃんとまったり。「猫たちと遊ぶ時間が、私にとっての癒しです」。

ダイニングテーブルは大きな丸テーブル。
大人数座っても、会話が弾みます。

 ワタナベさんのリビングダイニングに入ると、まず目に飛び込んでくるのが、大きなダイニングテーブルです。
「以前は長方形のテーブルを使っていましたが、料理撮影時などで毎回5~6人がテーブルを囲むわが家では、ラウンドタイプの方が使い勝手がいいと思ったのです」。
 3人家族のワタナベ家。普段はそれほど大きなテーブルは必要ありません。でも、人数が増えたときに、丸テーブルなら角がないので融通が利く。ワタナベさん宅のテーブルは直径1500㎜と大きいですが、圧迫感がなく、部屋が広く感じられます。
「中でも一番のメリットは、会話が弾むこと! 5~6人座っても、みんなの顔が見え、全員で一つの話題について話せるんです」。
 長方形のテーブルを使っていたころは、端と端の人が離れてしまって話がしづらく、どうしてもそれぞれが話をすることに。それが丸テーブルなら、みんなが一緒に盛り上がれる。また、撮影後の試食のときの料理の取り分けもスムーズだそう。
「一時期、中華料理屋さんのような回転テーブルがあればもっと便利かも!? と、ネットで探したことも。丸テーブルを使い続けてみると、回転テーブルがなくても誰かの手を煩わせることなく、取りたいものに自分の手が届く。その点も丸テーブルのよさですね」。

TC Staff comments───
タイムレスコンフォートにも直径1100と1400㎜のラウンド型のテーブルがあります。最大5~6人が囲め、みんなで集まるときにも活躍してくれます。

テラスでは、バジルやミント、ローズマリーやユーカリなど、たくさんのグリーンを育てているワタナベさん。朝、支度をしたら、まずはテラスで思いきり深呼吸するのが日課。
「日差しを体いっぱいに浴びると、気持ちよく一日を始められます」。

ガラス瓶に飾っているは、テラスで育てた草木。木のスツールにのせて。もうひとつにはアロマケースを。真似したいアイデアです。
「剪定した枝を水に挿していたら、いつの間にか根が生えてきました(笑)。木のスツールは温かみがあり、経年変化を楽しめるのも好きで、いくつか置いています」。

ひな祭りには、ちらし寿司を。
おいしく炊いたご飯で作れば格別です。

「ひな祭りには、毎年ちらし寿司を作ります。わが家は息子だけですが、不思議とこの日には食べたくなるんですよね。今日はすし酢の代わりに梅干しと梅酢を加えて作りました。梅干しの赤がひな祭りっぽいかなって(笑)」。
甘ったるくなく、キリッとさわやかな酸味が好みとか。信楽焼の釜で炊くとご飯自体がおいしいので、梅干しを混ぜれば上に具をのせなくても十分なくらいといいます。
「合わせるのは、きまってはまぐりのお吸いもの。菜の花入りが定番です。息子には、「ひな祭りにはちらし寿司だよね!」と、季節のご飯を大切にするようになって欲しいな、なんて思っています」。

ご飯炊きは、随分前から土鍋を使用。最近、信楽焼米炊き釜に変えたそう。
「この土鍋は重くなくて扱いやすい。ごはんがふっくら炊けるのはもちろんですが、ご飯が底に焦げつかない。持ち手がなく、収納しやすいのもいいですね」。
今日のように酢飯にする場合は、いつもよりも水分量を少し減らし、かために炊き上げます。

Homeland 信楽焼 米炊き釜

寿司桶は、ひとつは持っておきたいアイテム。そのままテーブルに出せば、見栄えもして気分も上がります。
「わが家は全員、酢飯好き。無性に食べたくなり、特別な日だけでなく寿司桶でお寿司を楽しむことも」。

山一 すし飯台

マイヤーの片手鍋は直径16㎝と小さいのに深さがある、なかなかないタイプ。ガス火にいくつもかけるときにもスペースをとらず、使いやすい。
「蓋がぴったり閉まるので、なんならご飯も炊けます」。
レードルは柳宗理。シンプルなデザインかつ具材がすくいやすいので、汁もののときには欠かせないそう。

ANOLON ルクス片手鍋16㎝
#Recipe

梅のちらし寿司

材料(作りやすい分量)
温かいご飯 2合分
えび(ブラックタイガーなど) 6尾
絹さや 8枚
───
〈酢ばす〉
れんこん 80g
A
|米酢 大さじ2
|砂糖 大さじ1
|塩 ひとつまみ
───
〈錦糸卵〉
卵 2個
B
|砂糖、薄口しょうゆ、片栗粉 各小さじ1
|水 小さじ2
サラダ油 小さじ2
梅干し 3個
梅酢* 大さじ1
───
いり白ごま 少々

*梅酢がない場合は、米酢大さじ1、砂糖小さじ1、塩小さじ1/3で代用する。

作り方
 絹さやは筋を取る。小鍋に湯を沸かして塩少々(分量外)を入れ、絹さやを1分ほどゆでて取り出し、粗熱がとれたら細切りにする。

 えびは背ワタを取る。の湯に酒大さじ1(分量外)を入れ、えびを2分ほどゆでてざるに上げ、粗熱がとれたら殻と尾を除き、横半分に切る。

 酢ばすを作る。れんこんは皮をむいて3㎜厚さのいちょう切りにする。小鍋に湯を沸かして酢小さじ1(分量外)を入れ、れんこんを2分ほどゆでてざるに上げ、水けを拭く。合わせたAに熱いうちに漬ける。

 錦糸卵を作る。ボウルに卵を割りほぐし、Bを加えてよく混ぜ、ざるで濾す。卵焼き器にサラダ油を熱し、卵液を2~3回に分けて入れ、弱めの中火で焼いて薄焼き卵を作る。粗熱がとれたら細切りにする。

 寿司桶に温かいご飯を入れ、を漬け汁ごと、種を除いた梅干し、梅酢を加えて切るように混ぜる。の錦糸卵、の絹さや、のえびをのせる。好みで型抜きしたにんじんなどをのせ、いり白ごまをふる。

ご飯の炊き方
① 
米2合(360㎖)を洗い、ざるに上げる。

 米炊き釜にの米を入れ、1割増しの水*(390~400㎖)を加え、30分ほど浸水させる。

 米炊き釜を中火にかけ、沸騰したら弱火にして7分加熱する。火を止め、10分ほど蒸らす。

*寿司飯でなく、普通のご飯の場合は、2割増しの水(430㎖)を加える。

#Recipe

はまぐりのお吸いもの

材料(2人分)
はまぐり 4個
菜の花 1/2束(100g)
ゆずの皮 少々
だし(かつお昆布) 300㎖
酒 大さじ2
A
|薄口しょうゆ 小さじ2
|塩 小さじ1/4

作り方
 はまぐりは3%の塩水(分量外・水500㎖に対して塩大さじ1)に1時間つけて砂出しし、殻をこすり合わせて洗う。

小鍋に湯を沸かして塩少々(分量外)を入れ、菜の花を1分30秒ゆで、冷水にとって水けを絞り、食べやすい長さに切る。

鍋にだし、酒、を入れて中火にかけ、煮立ったらアクを除き、弱めの中火にしてAを入れる。はまぐりの口が開いたらを加えてさっと煮て、器に盛り、ゆずの皮を散らす。

Profile
ワタナベマキ

1976年神奈川県生まれ。夫と長男と猫2匹と暮らす。グラフィックデザイナーを経て、2005年に料理家として活動を始める。日々食べるものをおいしくていねいに作るのが信条。素材の味をシンプルに引き出す料理、素材の組み合わせに定評がある。ライフスタイルに憧れるファンも多い。現在は、テレビ、雑誌、オンライン料理教室など幅広く活躍中。
https://maki-watanabe.com

著書は『毎日のおかずはシンプルがいい』(エムディエヌコーポレーション)、『アジアの煮込み』『うちの台所道具』(主婦と生活社)、『疲れないからだになる鉄分ごはん』(家の光協会)、『まずは塩しましょう。無駄なくおいしく食べきる』(KADOKAWA)など多数。

撮影/福田喜一
構成・文/飯村いずみ
アートディレクション/小橋太郎(Yep)