ラグの力を借りて、
暮らしを心地よく彩る
暮らしを心地よく彩る
「もっと家を心地よくしたい」「インテリアをどうにかしたい」とお悩みの方へ。
「HOUSE」を、自分や家族にとって居心地のいい「HOME」に変えるヒントを、プロに教えて貰いませんか?
インテリア&フードスタイリストの岩﨑牧子さんに、家具や照明、ラグの選び方、小物の飾り方について教えて頂きながら、スタイリングを提案して頂きます。
朝夕に季節の移ろいを感じるようになったら、インテリアも模様替えの準備を。秋冬に向かう季節なら、温もりを感じるファブリックやラグ、小物やアートを。春夏に向かう季節なら、涼を感じられる爽やかなファブリックやラグなどへと変えて、移りゆく季節を、室内でも楽しみたいものです。
今月はスペースごとのラグの選び方、活用方法について提案します。インテリアの印象を大きく変えたいなら、手っ取り早いのが面積の大きなものを変えることです。壁の色を変えたり、大きな窓があるならカーテンを変えてみたり。床も大きな面積を占めるため、その上に敷くラグは1枚でかなりインテリアの印象を変えることができます。家具は、価格、大きさ、移動の大変さを考えると、そう簡単に買い替えられませんが、ラグなら比較的気軽に取り入れられるというメリットもあります。硬質で輪郭のはっきりした家具のなかに、柔らかく彩り豊かなファブリック類、つまりラグやカーテンが加わることで、より親しみやすくリラックスして過ごせる場となります。
ラグにはもちろん印象を変えるだけではなく、足元を温める、床を守る、生活音を和らげる、ホコリを舞い上がりにくくするなど機能的な役割があります。たとえば、寝室のベッドの横、足を下ろすあたりにラグを敷けば、夜中や朝に目が覚めて、ベッドから床に足を下ろした時にひんやりとして身が縮み、一気に目が覚めてしまうなんてこともありません。ラグはやみくもに敷くのではなく、必要な場所に、適したものを選ぶことが大切です。
さらに、ラグには空間を緩やかに区切り、ゾーニングするという活用法もあります。昨今はリビング・ダイニング・キッチンがワンルームとなった間取りも多く見かけます。そんな広くて開放的な空間は、壁で仕切らなくてもラグを敷くことにより、緩やかにスペースを分けることができます。たとえ自分だけの部屋がなくても、ラグを敷き、その上に家具を置けば小さなマイコーナーが完成します。
まずは、ソファに座った時の足元に敷くラグの選び方について。ソファ以上に床面積の多くを占めることになるため、ラグ選びも大切です。ソファが決まったら、それに合わせて色や素材を選びます。ポイントは、背景にするのか主役にするのか?という点。ソファなどの家具を主役にする場合、ラグは背景となるように。ソファを際立たせるための床に馴染む色の無地や、遠めには無地に近いようなものを選び脇役に徹します。逆にソファなどの家具がシンプルな色・デザインだからラグを主役にというケースもあります。この場合はインテリアのポイントになるような柄や美しい色合いものを選びましょう。こんなふうにソファとラグの関係をまずは考えてみることをおすすめします。その上でサイズ感、そして寝転んだり、肌に直接触れたりすることも考慮して、素材、毛足の長さなどを吟味し、選ぶことをおすすめします。
季節や気分でラグを替え、楽しむ醍醐味も
ラグは季節によって比較的簡単に、素材や毛足の長さ、色などを替えて楽しむこともできます。夏なら、さらりとした肌触りの毛足の短いものを。冬なら、フワフワと毛足が長く、見るからに温かそうなものを。冬は暖色系、夏は涼しげな寒色系と色合いを変えてみるのもいいですよね。ラグによって移ろいゆく季節を感じ、気分によって気軽に替えて楽しんでみてはいかがでしょう。
また、小さなお子さんがいるお宅なら、天然素材のものを選ばれるのをおすすめします。天然素材は静電気が起きにくく、埃が吸着しにくいので安心して寝転んだり、遊んだりできます。
まるでシルクのような艶のある、グレーのグラデーションが美しい上質なラグ。見る角度によって表情が異なるため、無地でも単調にならず、深みや奥行きのある高級感漂うインテリアに仕上がります。デンマークのLINIE DESIGN(リニエ デザイン)社製のハンドメイドラグで、素材は天然素材を用いた持続可能な再生繊維・セルロースから作られるヴィスコース100%です。
白と黒の羊毛が混じった、合わせやすいモノトーンのラグ。ウール100%の毛足の長いシャギーラグで、足元をしっかり温めてくれ、見た目もヌクヌクとして暖かそう。寒い季節にぴったりです。でも実は、ウールなど天然素材のラグは吸放湿性があるため、夏も意外にサラッとしていて、一年を通じて使える優れものです。たっぷりとした毛足はラグジュアリー感があり、シンプルなソファのアクセントとして、またモノトーンなので、明るい色や柄物のソファにもすんなりと馴染み背景にもなる、両方楽しめそうなところも魅力。こちらもデンマークのLINIE DESIGN(リニエ デザイン)社製のハンドメイドです。
ざっくりと編んだニットのセーターのような、LINIE DESIGN(リニエデザイン)社製のウール100%のラグ。職人により手仕事で織り上げられた立体的な織模様がポイントとなり、足裏に心地のよい、程よい厚みがあります。表情のある織模様は、白やベージュ、グレーでまとめたニュートラルカラーのナチュラルなインテリアに程よいニュアンスを加えてくれます。さらにモダン、北欧風、和風とどんなインテリアにも合わせやすく、頼りになるおすすめのラグです。
「ラグには季節によって敷き替える楽しみがあります。上の2つのスタイリングでは同じ白いソファを用い、ラグを敷きかえてみました。シルバーグレーの艶感のあるラグは、クールで涼しげ。春夏シーズンを想定し、モノトーンでまとめています。一方、毛足の長いシャギーのラグは、見るからに温かそうで秋冬シーズンにぴったり。こんなふうに季節によってラグの毛足の長さや素材を変えるだけでも、インテリア全体の印象が全く変わります。また、ラグを替えたら、合わせてクッションも替えて、合わせを楽しむのもおすすめです。」(岩﨑さん)
ダイニングは家族が長く過ごす場所。座った時に足元がひんやりするのは嫌ですよね。足元を温めるためにラグに敷くのはいかがでしょう。選ぶなら毛足の短いものがおすすめです。立ったり、座ったりするたびに頻繁にダイニングチェアを動かすので、それに耐えられる短毛や平織りの比較的フラットなラグを選びましょう。毛足が長いとダイニングチェアを動かしにくいですし、床との段差も発生してしまいます。さらに食べこぼしなどのゴミが入り込んでしまいがちに。また、ラグを敷くことでフローリングなどの床を傷つけたり汚したりせずに済むので、小さなお子さんのいるお宅はダイニングテーブル&チェアの下に汚れ防止の意味でラグを敷くのもおすすめです。
細長くカットされた毛皮をパッチワークのように縫い合わせた贅沢なラグ。天然のレザーならではの色合い、白からグレーへと美しいグラデーションになるよう仕上げられていて、まるでアート作品のよう。毛足の短い毛皮なので、ダイニングの下に敷くのにもぴったりです。革100%でデンマークのLINIE DESIGN(リニエ デザイン)社製です。
「椅子を引いたり、立ったり座ったり、家具を動かすことの多いダイニングには、レザーを使った毛足の短いラグを選びました。無地ではなく、天然レザーのグレーのグラデーションのラグを選ぶことで、グレートーンのインテリアに陰影を付けることができ、ニュアンスが生まれます。ダイニングに敷く時は、サイズ感に注意が必要です。椅子を引いた時のことを考慮して、少し広めのサイズを選びましょう。」(岩﨑さん)
3つ目はラグを活用して小さなコーナー、スペースを作りましょうという提案です。最近では、L D K(リビングダイニングキッチン)が、ワンルームになった間取りを多く見かけます。家族の気配を感じながら、思い思いに過ごす。平和な休日を絵に描いたようなシーンです。でも時には一人になりたい!一人の時間を楽しみたい!というかたもいらっしゃるのでは?個室があれば問題ありません。個室を持つことがかなわない場合は、L D Kや寝室などの一角に小さなラグを敷いてコーナーを作るのはいかがでしょう。そこに座り心地のいい椅子や小さなサイドテーブルなどを置いて自分だけのコーナーにするのです。たとえ壁で仕切られていなくても、ラグを敷くことで緩やかにゾーニングでき、愛すべき小さなマイスペース、コーナーとなります。読書をする、勉強をする、音楽を聴くなど、一人になって、寛いだり集中できる魅力的なスペースとなります。
珍しいかまぼこ型のラグは、コーナーづくりにぴったり。円形のラグは、上に椅子などを置こうと思うとそれなりのサイズとなり、広いスペースがないと敷くのが難しいですが、これなら壁ぎわの一画に無駄なく、効率的にコーナーを作れます。足を置くスペースもゆったり確保できて、心地のいいマイコーナーになりそう。また、この形のラグはソファの前に敷くのもおすすめ。コーヒーテーブルが円形の場合はなおさらフィットするはずです。素材は持続可能な再生繊維・セルロースから作られるヴィスコース100%。床色にも馴染むナチュラルで合わせやすい写真の色・オーカーの他にシルバーもあり、デンマークのLINIE DESIGN(リニエ デザイン)社製です。※現在は販売を終了しています。
「座り心地のいいアームチェアとサイドテーブルを置いて、照明を吊るし、一人でゆっくりと寛げるコーナーを作りました。読書をしたりお茶を飲んだり、たとえ自分の部屋が無くてもここを1つの部屋のように、自分だけのスペースとして活用できます。より居心地よくリラックスして過ごせるよう、ラグもチェアのレザーも、サイドテーブルもナチュラルな色合い、アースカラーでまとめました。木製のハシゴを置いて、ラックのように本を掛けて収納したり、照明や植物を吊るしています。ポイントは観葉植物。植物を加えることで、落ち着きのあるアースカラーでまとめたコーナーが生き生きとしてきます。」(岩﨑さん)
まずは1箇所にラグを敷き、
お気に入りのコーナーづくりを
これまで述べたとおり、ラグには機能的な役割以外にも、インテリアのポイントになったり、印象を変えたり、ゾーニングしたりという効果があります。そして美しいラグには、空間の質や空気までを変えてしまう力があるのです。せっかくなら、効果的に活用したいもの。まずはお気に入りのラグを1枚見つけ、自宅の床の1箇所、たとえばソファの前などに敷いてみて下さい。思わず寝転びたくなる温かく居心地のいいコーナーが誕生します。次は、ダイニングの下、アームチェアの下、ベットサイド、廊下…といった具合に、お気に入りのラグを敷いた素敵なコーナーが増えていけば、家じゅうが居心地よく快適になっていくはず。ラグを敷いた愛おしいコーナーづくり、この冬、ぜひお試し下さい。
インテリア&フードスタイリストとして、雑誌、カタログ、広告など幅広く活躍する。大人っぽくエレガントかつ洗練されたスタイリングに定評がある。器好きで、作家の工房を訪ねたり、国内外で開催される食のイベントでスタイリングを手がけ、セレクトした器を販売することも。趣味でヴィンテージのカトラリーをコレクション。
撮影/川上輝明(bean)
スタイリング/岩﨑牧子
構成・文/鈴木奈代
アートディレクション/小橋太郎(Yep)