食べるの大好き。料理はそんなに得意じゃないけど、ワインやビール片手にチャチャッとおいしいものを作りたい。そんな方に贈る『プロに教わる!おいしいの法則』。
教えてくれるのは、三軒茶屋にあるシンプルで食べ飽きない料理とナチュラルワインが人気のイタリアンレストラン「ブリッカ」の金田シェフ。
「話題の余熱パスタのことが知りたい!」とお願いしたところ、自身の著書である『ストウブ1つでもちもち余熱パスタ』のことを詳しく紹介してくれた。
余熱パスタって、何!?
「余熱パスタ」は、ストウブの保温性を利用して作るパスタです。ストウブは火を止めてからもしばらくは火にかけているのと同じ状態が続くため、ガスにかける時間がいつもの半分でパスタがゆでられるのです。ガス代が節約できる! 使う水分も少なくてすむ! そして、何よりもちもち食感! 余熱パスタはいいことだらけ。もちろん、おいしさもイタリアンシェフである僕が保証します!!
ストウブの特徴
ストウブはシンプルでかっこいいだけでなく、料理をおいしくする工夫にあふれています。その特徴の1つが、厚みのある鋳鉄製。鍋全体がゆっくりと均一に温まり、一度温まったら冷めにくい。余熱パスタが作れる所以です。特徴2つめは、蓋の裏側についている突起。ココットの場合はピコ、ブレイザーの場合はシステマと呼ばれ、加熱中に高温の蒸気を鍋の中で循環させる働きをします。素材のうまみを逃さずパスタに移すため、パスタ自体もおいしくなるのです。特徴3つめは、とにかく丈夫。強火にせず、内部の黒マット・エマイユ(ホーロー)加工を傷つけないようにすれば、長く使えます。
余熱パスタは、ペペロンチーニ系のパスタもトマトソース系もクリーム系も作れます。その中で今回紹介するのは、夏にぴったりのスパイシーパスタです。インドの炊き込みご飯・ビリヤニをイメージして作ってみました。強いうまみを持つラム肉にスパイスを利かせたら、暑さもぶっ飛びますよ。ポイントはパスタを細かく折ること。パスタを短くすると食感も変わって、パスタの新しいおいしさを発見できるんです。もう1つのポイントは水をいっさい使わないこと! 野菜を蒸し煮にして出てきた水分に白ワインを加え、その中でパスタをゆでる。だから、野菜のうまみが濃厚!
野菜のうまみを十分吸い込んだパスタは、それはそれはおいしいですよ~~。
材料と作り方(2人分)
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スパゲッティーニ(1.6㎜) 160g
ラム肉 200g
玉ねぎ 1/2個(100g)
⇒1㎝角に切る
パプリカ(好みの色) 150g
⇒種とワタを取り、1㎝角に切る
にんにく 2かけ
⇒つぶす
ローズマリー 2枝
塩 適量
オリーブ油(ピュア) 大さじ1
白ワイン 1カップ
一味唐辛子 小さじ1/2
ガラムマサラ 小さじ2
裏ごしトマト 100g
レモン 適宜?
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*小さじ1=5mL、大さじ1=15mL、1カップ=200mLです。
① ラム肉に塩を振る
ラム肉はミンチ状に包丁で細かく刻み、1%の塩(肉200gに対して2g=小さじ1/2弱)をして5~10分おく。
〈おいしいの法則①〉
塩を振ったらしばらくおき、塩をよくなじませよう。ここで肉に味をしっかりつけておかないと、味がぼやけてしまうんだ。
② 野菜を炒める
ストウブにオリーブ油(ピュア)、にんにくを入れて中火で炒め、じくじくして香りが出てきたら(色づけないよう注意)玉ねぎ、パプリカ、ローズマリー、塩2つまみを入れ、中火で炒める。
〈おいしいの法則②〉
水分の少ないピーマンではなく、パプリカを使うのがポイント。塩を2つまみ入れるのは、野菜から水分を引き出すため。炒めるときに使ったのは、sambonetのシリコンスパチュラ。熱に強く、鍋中を傷つけることもないから安心して使えるよ。
③ 野菜を蒸し煮にする
全体に油が回ったら蓋をし、途中数回混ぜながら弱火で8~9分蒸し煮にする。
〈おいしいの法則③〉
水を加えず野菜の水分だけで蒸し煮にし、8〜9分かけて野菜の甘みとうまみを十分引き出そう。ところで、鍋つかみ代わりに使用しているのはSankara.のキッチンクロス。厚手で大判だからこんな使い方もできる! 吸水性と速乾性に優れ、用途が広いので何枚か揃えておきたいアイテムです。
④ 白ワイン、ラム肉を加える
白ワイン、①のラム肉を加え、ざっくりとほぐす。
〈おいしいの法則④〉
ごろごろっとした肉感を味わいたいから、肉はほぐし過ぎないのかコツ。程よいしなりのあるsambonetのシリコンスパチュラがここでも活躍!
⑤ スパゲッティーニを加えてゆでる
スパゲッティーニはポリ袋に入れ、手でポキポキと2~3㎝長さに折り、④に加える。スパゲッティーニを液体に沈め、塩4gを振り、煮立ったら蓋をして弱火で2分ゆでる。蓋を開け、パスタをしっかり混ぜ、再び煮立ったら蓋をしてさらに3分ゆでる。
〈おいしいの法則⑤〉
ポイントはスパゲッティーニをしっかり液体に沈めること。でないとかたい部分が出てきてしまうからね。もう1つめは、2分したらしっかり混ぜること。これはパスタ同士がくっつくのを防ぐため。
⑥ 調味する
一味唐辛子、ガラムマサラ、裏ごしトマトを加えて混ぜ、煮立ったら蓋をして火を止め、5分余熱で火を通す。器に盛り、好みでレモンを添える。
〈おいしいの法則⑥〉
余熱で火を通す前は、しっかり煮立てておこう。でないと、パスタが生ゆでの場合があるので、注意して!
夏になると、揚げ物やパン粉焼きが食べたくなるのはなぜだろう? あのカラリとした感じがほしくなるのかな。ということで、いわしのインボルティーニのオーブン焼きです。インボルティーニとはイタリア語で「巻く」「包む」の意味で、家庭料理の定番です。パン粉を振ってカリカリに焼いたところにフレッシュトマトのソースをたっぷりかけ、夏仕様にしました。焼きたてのアツアツをいただきましょう。
材料と作り方(2人分)
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いわし(三枚におろしたもの) 4尾分
ズッキーニ 約1/2本
なす 約1本
バジル 大4枚
塩 適量
【トマトソース】
| トマト 2個
| オレガノ 小さじ1/3
| 塩 小さじ1/2
オリーブ油(ピュア) 大さじ1と1/2
パン粉(細かいもの) 大さじ2
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① 野菜を切る
ズッキーニ、なすは厚さ5㎜幅に切り、4~8枚ずつ用意し(野菜たっぷりにしたい場合は8枚用意する)、軽く塩を振る。いわしにも1%の塩を振る。
〈おいしいの法則①〉
薄く大きく切り、いわしで巻きやすくしよう。包丁の面が広いHomelandの菜切り包丁なら、幅を均一に切りやすい。刃当たりがやわらかい、同じHomelandのひのき 無垢のまな板と合わせて使うとより使いやすいよ。
② トマトソースを作る
トマトは乱切りにし、保存瓶に入れる。オレガノ、塩も加え、蓋をして10回程度振る。
〈おいしいの法則②〉
ソースは、材料を瓶に入れて振ると簡単に全体によく混ざります。使ったのはBORMIOLI ROCCOのクアトロスタジオニー ジャー。トマトソースは3日保存可なので、一度に多めに作り、そのまま冷蔵庫で保存してもいいよね。
③ 野菜を焼く
鉄のフライパンを熱してオリーブ油大さじ1/2をなじませ、①のなすをのせ、表面をこんがりと焼き、取り出す。鉄のフライパンにオリーブ油大さじ1/2を足してなじませ、ズッキーニも同様に焼き、取り出す。
〈おいしいの法則③〉
ズッキーニとなすは炒めるのではなく、焼く! つまり、あまり動かさずに焼き目をつけるのがコツなんだ。鉄のフライパンなら、野菜の余分な水分を飛ばし、香ばしく焼けるよ。
④ いわしで野菜を巻く
いわしを尾を向こう側にして縦長におき、バジル、③のズッキーニ、なすをそれぞれ1~2枚ずつのせ、手前からくるくると巻き、楊枝で留める。
〈おいしいの法則④〉
尾を巻き終わりにすると、形よく仕上がるよ。ズッキーニとなすに加え、バジルを巻くのがポイント。さわやかな香りが広がり、料理がワンランクアップ!
⑤ オーブンで焼く
③の鉄のフライパンを熱してオリーブ油大さじ1/2をなじませ、④をのせてパン粉を振り、170℃に予熱したオーブンで10分ほど焼く。
〈おいしいの法則⑤〉
フライパンごとオーブンへ。鉄のフライパンなら熱伝導がいいからカラリと焼けるんだ。Homelandの鉄フライパンは取っ手が短いため、オーブンに入れやすいのも魅力。今では毎日のように使う、僕の相棒です。
⑥ 焼けたら、ソースをかける
こんがり焼けたら器に盛り、②のソースをかける。
〈おいしいの法則⑥〉
アツアツに、冷たいトマトソースをかけると、“アツ冷”でおいしい!!
献立のイメージは、久しぶりに会う友人が遊びに来る日の簡単ディナーです。パスタのようなビリヤニのような……。ちょっと驚きのあるこんな料理があれば、「え?これ何!?」って話が弾みそうでしょ!! いわしのインボルティーニのオーブン焼きを合わせたのは、サクサクとした食感がまったりとおいしいパスタのアクセントになるから。下準備だけしておき、友人が来てからオーブンに入れ、焼きたてを提供しよう。”焼きたて”って、やっぱりうれしいもんね。
『ストウブ1つでもちもち余熱パスタ』
文化出版局刊 1760円(税込み)
金田シェフがストウブを使い、家計にもやさしいほったらかしにできるパスタレシピを紹介。パスタといえば! の定番の味から、オリジナルのパスタ料理まで。本格的な味わいはレストランのシェフならでは。余熱パスタは独特のもちもち食感で、一度食べたらクセになる!
文化出版局Instagram/@books_bunka
金田真芳(かねだ まさよし)さん
「Bricca(ブリッカ)」&「Però(ペロウ)」オーナー兼料理長。都内イタリアンレストラン数店に従事し、2010年三軒茶屋にイタリアンレストラン「Bricca(ブリッカ)」開店。小学校高学年のころからラーメンの味変を楽しむなど料理に興味を持ち、高校卒業後料理の道へ。「イタリアンをベースに、自分の興味に素直に、自分が食べたい作りたい料理を作っていきたい」と語る。著書に『うち飲みワインのおいしいつまみ』(Gakken)がある。
撮影/キッチンミノル
スタイリング/久保百合子
構成・文/飯村いずみ
アートディレクション/小橋太郎(Yep)