ナチュラルワインから考える
グラス選び

ちょうどいい「モノ選び」・2023.08.11

お店で飲んでおいしかったワインを買って帰り、家で飲むと「あれ?」ってこと、ありますよね。ワインをおいしく楽しむには温度なども大きく関係していますが、グラスも無関係ではありません。そこで! せっかくのワインをおいしく飲むためのグラス選びを、三軒茶屋にあるワインストア「Però(ペロウ)」のソムリエール、熊本千絵さんに教えていただきました。

ナチュラルワインって?

ナチュラルワインとは一般的には、有機栽培のブドウを使い、酸化防止剤など化合物をできるだけ加えずに醸造したワイン、と認識されています。ですが、私の思うナチュラルワインは、「造るのではなく、自然の中で育てていくようなものだと感じています。均質化を目指して薬剤に頼るのでなく、畑の微生物、酵母菌の働きなど自然の力に委ねその土地の個性をそのまま反映する。」その分、人為的に「こういう味にする!」という作り方ができないもの。その魅力はたくさんありますが……。一番には補正されないからこそ生まれるアンバランスさ!ではないでしょうか。音楽もクリックがぴったり合っていなくてちょっとずれていても、グルーヴ感が出て面白い。それと一緒です。とはいえ、「薬剤を何も使っていないからいいでしょ!」ではなく、ちゃんと素材の良さを知り、最大限に生かしているからこそ、自然体でおいしいワインが生まれるのだと思います。

グラスっていろいろあるけど

「どんなグラスを揃えたらいいですか?」とは、お客さまからもよく受ける質問です。デザインが素敵なものはたくさんあるし、本当はあれもこれも揃えたい! とはいえ、グラスを収納できるスペースがそんなにあるわけでもないし……。ということで、「まず最初に揃えたいもの」から、いろいろな「シチュエーション」に合わせたグラスまでを選んでみました。

まず、揃えたいのはこのグラス!

木村硝子店 ピッコロ10オンス
1つめに揃えたいのは、どんなワインも受け止めてくれる”太っ腹な”グラス。ナチュラルワインは日常的に楽しむものだから、グラスも気を遣わずにラフに使えるものを! とはいえ、ワインのおいしさもちゃんと引き出してくれるグラス……と、選んだのがこちら!

日常使いの条件である、ステム(脚)が短め! 軽い! 収納しやすい! が揃っているグラスです。微発泡、白、軽めの赤ワインなら、これ1つでOK! サイズ感もほどよく、収納もしやすい。コスパNO.1といっても過言ではありません。ペロウで使用しているのもこのグラスです。

グラス商品ページ

毎日の食卓で飲むワイン……と、微発泡もオレンジも赤も、ザブザブ飲めるワインをセレクトしました。微発泡はキメが細かすぎない泡のもの。オレンジならタンニンがそこまでなく、なめらかに飲み進められるもの。赤も、ロゼとの間のような香りは華やかだけど抜け感があるワインがおすすめです。

ワインはこちら!(Peròオンラインストア)

[ 簡単レシピ ]
水なすとカッペリ、バジルオイル

水なすを1㎝厚さに切って、さらに食べやすく切り、刻んだケッパー(イタリア語で「カッペリ」)をのせ、バジルをのせてオリーブ油をかけたら完成! 

「酸味と塩味はケイパーで、香りはバジルで。秒速でできるけど、おいしいバランスが揃っています」

ここで使った器

ちょっとだけいいワインを飲むなら!

木村硝子店 ピッコロ15オンス
うれしい出来事があったときや誰かが来る日は、いつもよりちょっとだけいいワインを飲みたい! グラスも日常使いよりもちょっとだけいいものを揃えておくと、「今日は、あれで飲んじゃう?」と気分が上がります。とはいえ、ゲストに気を遣わせないよう「ステム(脚)短め」がマストです。

少しいいワイン、香りのいいワインには、膨らみが大きいグラスを合わせましょう。ライブ会場は音楽を身近で感じたいのに対し、オペラなどは大きなホールで聴きたいのと同じです。より空気に触れてから口元に届くため、ワインの香りの広がりが大きいのです。ちょっとゆっくり楽しみたいときに。

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気の置けない仲間が集まった日には、いつもよりもちょびっといいものを! と選んだのは、美人さんだけどフレンドリーさも兼ね備えているワイン。オレンジはタンニンがほどよく果実感もあるワインですが、ある程度大きなグラスならタンニンをなめらかにしてくれます。

ワインはこちら!(Peròオンラインストア)

[ 簡単レシピ ]
桃とカラスミのオイルミント

を食べやすい大きさにカットし、オリーブ油からすみパウダーミントの順にかけるだけ。

「フルーツはオリーブ油をかけると、急にお酒に合う味に! 桃はサイズ感も重要で、ある程度存在感がある大きさに切ると、口の中でジューシーさが広がりますよ~」

ここで使った器

ど・スペシャルなグラスはコレ!

リーデル ヴィノム ピノノワール
ハレの日にはスペシャルなワインを楽しみたい! 特別なワインにふさわしい素敵なワイングラスも欲しい!! スペシャルなワインは香りがバンと膨らむものが多いから、その香りでグラスを満杯にして、少しずつゆっくりとワインの色も楽しみながら……。と思いを巡らせ、選んだグラスがこちら!

フォルムがとにかく美しい、デザイン性に優れたグラスです。スペシャルなワイン、特にフルボディのワインは、細いグラスではおさまりきりません。香りをゆっくり楽しむ距離感と膨らみが欲しい。でも、家ではステム(脚)は低めで安定感があるものがいい。このグラスは、それらの条件をばっちり満たしています。

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色や香りをゆっくり時間をかけながら楽しみたいワインを選びました。赤は複雑みのある香りが特徴の、このワイナリーのラストヴィンテージ。オレンジは開けた瞬間は香りがワ~ッと出てくるのでグラスの中に香りを広がらせてから飲みたいワインです。もう1つは、人気のハイクオリティワイン・ヴォドピーヴェッツ!!

ワインはこちら!(Peròオンラインストア)

[ 簡単レシピ ]
うにのマスカルポーネ

マスカルポーネチーズを軽く練り、うにをのせ、粒塩をひとつまみしたら、レモンの皮を削りかけ、オリーブ油ピンクペッパーをかけます。

「うには乳脂肪、柑橘系と相性がいい素材。ウニとチーズのねっとり食感に粒塩がアクセントに!」。チーズはリコッタチーズでも。

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外で! ベランダで!

木村硝子店 ベッロ
外で食べるおにぎりってなんであんなにおいしいのでしょう。それと同じで、外で飲むお酒って、やっぱり格別においしい! 開放感があるからかな? 最初はビールでプハーッと喉を開き、その後ワインに移行するのもいい。自由でカジュアル! なシーンにふさわしいグラスを選んでみました。

もともとは冷茶を楽しむためのグラスです。そのためか、ビールやワイン、サワーなど何を入れてもしっくりきます。大空の下で飲むときの絶対条件、風に揺られても大丈夫! スタッキングもできるから持ち運びも便利です。ときにはおつまみを入れても、いい感じですよ。

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外で飲むから、水分補給感のあるサーッと飲めるワイン。すっきり、さっぱり!をキーワードにセレクトしました。ロゼはロゼの中でもさらっとしていて、瑞々しさがあるもの。オレンジは夏にふさわしいオレンジで、気兼ねなく飲めます。クラフトビールなんかもいいのでは?

ワインはこちら!(Peròオンラインストア)

[ 簡単レシピ ]
たこのフランボワーズビネガー

たこを瓶で叩いてやわらかくし、一口大の乱切りにして器に入れ、フランボワーズビネガーをじゃぼじゃぼかける。以上!

「酸っぱいたこって、想像しただけでうまそうでしょ!! タバスコで辛みを足すとよりおいしい」ビネガーはりんごビネガーなどでも。

ここで使った器

大人数でワイワイ、ガヤガヤ楽しむなら!

リーデル・オー リースリング/ソーヴィニヨン・ブラン(2個入)
大勢集まるとき。一番気になるのは、グラスのステム(脚)問題! 中には早々に酔っぱらっちゃう人もいて……。わー、グラス大丈夫かな~と余計な心配せずに楽しみたいし、ゲストにも緊張感を与えたくない。ということで、ステム(脚)なしのグラスに決まり! その中でも選んだのが、こちら!

大人数で盛り上がるには、ステム(脚)なしのリーデルグラスがおすすめです。ガチャガチャしなくていいのはもちろん、いいワインにも対応してくれる口当たりのよさ、リーデルならではの高級感が魅力です。これなら、会話を邪魔することもありません。スーッと手になじむフォルムもいいですね。

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乾杯用に選んだのは、シードル。しょうが入りですごくドライなので飲み進みがいいのです。その後は、大勢ならではのマグナムボトル! みんなでワイワイ飲むには重厚感のあるものよりも、サクサクと飲めるカジュアルタイプがおすすめです。ロゼも赤もフレッシュ感があり、軽やかなものを。

ワインはこちら!(Peròオンラインストア)

[ 簡単レシピ ]
ポップコーンのトリュフオイル

市販の塩味ポップコーンを電子レンジで作り、ポップコーンの袋にトリュフオイルバターを入れてシャカシャカ!

「大勢で盛り上がるときには、こんな手軽さが楽しい。トリュフオイルの香りには歓声が」バターポップコーンの場合は、バターを入れなくても。

ここで使った器
大切な方へ! 自分へのご褒美に!
ド・スペシャルなグラスギフト

やはり揃えたいリーデルのワイングラスは、2個セットなら結婚や金婚式などのお祝いにぴったり。ワイン好きの方へのプレゼントとしても喜ばれること確実です。タイムレスコンフォートでは、コットン製のオリジナルのギフトバッグに入れてラッピング。この機会にぜひ、お買い求めください。

グラスのあれこれ

酔ったら洗うな

酔ってからグラスを洗うなんて、自殺行為です。洗わないとはいってもそのまま放置せず、グラスに水を張っておきましょう。ワインを注いだ部分まで水を入れておけばOK。大切なグラスを長持ちさせるためにも、「酔ったら洗うな!」を合言葉にしましょー。

洗い方

洗剤をよく泡立てたスポンジで、泡で洗うのがポイントです。くれぐれもグラスをこすらないこと! スポンジはグラス用の2つのスポンジがついているものがおすすめ。このタイプなら、グラスの外側と内側を一度に洗うことができます。

拭き方

トーション(ふきん)を対角線に持ち(長く使えるように)、トーションの片側の端でグラスのステム(脚)とプレート部分を拭き、もう片側のトーションの端をグラスに入れ、やさしく回しながら拭く。こうすると、グラスに指紋がつく心配もありません。

Homeland キッチンクロス
「Però(ペロウ)」

三軒茶屋と下北沢にある、角打ちスタイルのワインストア。ワイン好きをはじめ、有名レストランのシェフもこぞって訪れる人気店。店名の「Però」はイタリア語で「しかし・だけど」の意味。イタリア人は言い訳も多いけれど、とにかく楽観的。「帰らないといけない……”けど”一杯飲んじゃおう」。そんな場所を作りたいと2017年にオープン。2022年に下北沢店もオープン。

三軒茶屋店/東京都世田谷区三軒茶屋1-40-11
下北沢店/東京都世田谷区北沢3-19-20 reload1-13

グラス選びを教えてくれたのは

熊本千絵(くまもと ちえ)さん
ワインストア&ワインスタンド「Però(ペロウ)」ソムリエール。都内イタリアンレストランでサービスに従事し、2020年より「Però」スタッフに。ワインは全く飲めなかったが、「飲める」「体が受け入れる」ワイン……自然な環境下で育ち、ケミカルなものに頼らず醸造したもの……との出会いからナチュラルワインの世界へ。「ワインは体に負担なく飲み進められるものかどうかが大切な気がします」。

Peró|Instagram

簡単おつまみを教えてくれたのは

金田真芳(かねだ まさよし)さん
「Bricca(ブリッカ)」&「Però(ペロウ)」オーナー兼料理長。都内イタリアンレストラン数店に従事し、2010年三軒茶屋にイタリアンレストラン「Bricca」開店。小学校のころからラーメンの”味変”を楽しむなど料理に興味津々。高校卒業後、料理の道へ。「イタリアンをベースに、自分の興味に素直に、自分が食べたい作りたい料理を作っていきたい」と語る。

Bricca|Instagram

もっと詳しく知りたい方は…

『うち飲みワインのおいしいつまみ
人気のナチュラルワインにも造詣の深い三軒茶屋のイタリアン『Bricca』の金田真芳シェフによるレシピ本『うち飲みワインのおいしいつまみ』(Gakken)販売中です。手軽に作れるカジュアルなイタリアンレシピが満載です!! ぜひお近くの書店やオンラインでチェックしてみてください!

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ナチュラルワインから選ぶグラス選び、いかがでしたか? いろいろお話しましたが、すべては楽しくおいしくワインを飲むため! 何かを始めるときに「形から入る」という方法がありますが、ワインも同じで、素敵なグラスを揃えたらワインがもっと飲みたくなりますよ。難しく考えず、おいしいワインライフを送っていただけたらうれしいです。

撮影・動画/上端春菜(bean)
構成・文/飯村いずみ
アートディレクション/小橋太郎(Yep)