ひび割れも愛着に変える!

天然木家具のお手入れ方法

TC tips・2025.6.6

天然木を使用した家具は、経年変化を楽しめるという大きな魅力があります。時間の経過や環境の変化に応じて、色味が深まったり風合いが変化したりします。
一方で、天然木は常に「呼吸」をしているため、空気が乾燥すると内部の水分が減少し、収縮によってひび割れが生じることがあります。こうしたひび割れも、天然木ならではの経年変化の一つであり、自然素材であることの証ともいえるでしょう。
しかし、日本のように湿度の高い季節と乾燥する季節がある環境では、木材の伸縮が大きくなり、ひび割れが目立ちやすくなることもあります。大切なのは、こうした自然な変化を「個性」として楽しみながらも、適切なケアを行うことで、家具を長く美しい状態で使い続けることです。

今回は、ひび割れが発生した際の具体的なお手入れ方法と、日常生活の中で実践できる予防策についてご紹介します。

ひび割れの例

こちら(写真)は、オーク材の家具で見られるひび割れの一例です。オーク材は硬くて耐久性の高い木材として知られていますが、温度変化に敏感で、特に乾燥する季節にはひび割れが発生しやすい傾向があります。
このようなひび割れは、木目に沿って発生することが多く、「内部割れ」と呼ばれます。これは、表面と内部で乾燥速度に差が生じることで発生する現象です。
ひび割れを放置すると、割れが広がったり、家具の構造に悪影響を与えたりする可能性があるため、早めの補修が重要です。以下では、具体的な補修手順についてご紹介します。

補修に使う道具

補修には、以下の道具を使用します。
【写真左から】
・乾いた布(タオルや布の切れ端でもOK)」
・木工用パテ
・ヘラ
・補修ペン
*木工用パテ、ヘラ、補修ペンは、ホームセンターなどで購入可能です。

1.パテを流し込む

ひび割れの隙間に木工用パテを流し込みます。このとき、パテを紙皿などに少量出し、ヘラを使って少しずつ埋め込むと、無駄なくきれいに仕上がります。
*パテには、クリームタイプ・粘土タイプ・ペンタイプなど、さまざまな種類がありますが、初心者にはチューブ入りの柔らかいクリームタイプがおすすめです。扱いやすく、細やかな作業にも適しています。

2.表面を整える

パテを隙間に埋め込んだら、ヘラを使って余分なパテをしごくように取り除き、表面が平らになるように整えます。多少はみ出しても、後で調整できるので、あまり神経質にならなくても大丈夫です。

3.拭きとる

表面についた余分なパテを乾いた布で拭き取ります。乾きかけたパテが周囲に残っている場合は、軽く湿らせた綿棒を使って優しく拭き取ると、よりきれいに仕上がります。最後に指先で触れて、表面が平らになっていることを確認しましょう。

4.乾燥させる

パテを埋め終えたら、しっかりと乾燥させましょう。乾燥時間は使用するパテの種類によって異なりますが、おおよそ数時間〜24時間程度かかる場合があります。
*必ず、使用されるパテの説明書に記載された乾燥時間を守ってください。

5.ペンで色付けする

パテが完全に乾燥したら、木材の色とパテの色に差がある場合、専用の補修ペンを使って色味を調整します。ペンでひび割れ部分をなぞった後、乾いた布で軽く拭き取るようにすると、色が木目と自然に馴染み、より美しい仕上がりになります。

6.完成

完了すると、補修部分はこのようにきれいになります。ひび割れの跡も目立たなくなり、見た目もぐっと美しくなりました。これで補修作業は完了です!

よりきれいに作業するコツ

作業中にパテが周囲に飛び散るのを防ぎたい場合は、ひび割れの両端にマスキングテープを貼るのがおすすめです。このひと手間を加えるだけで、仕上がりが美しくなります。

お手入れ方法を動画でも解説しています

日常的にできるひび割れ対策

天然木家具は、ひび割れを完全に防ぐことは難しいですが、日頃からのちょっとした工夫や対策を行うことで、ひび割れの発生を抑えることができます。

直射日光を避ける

温度差による乾燥を防ぐため、家具は直射日光の当たらない場所に設置しましょう。どうしても日光が当たる場合は、カーテンやブラインドで日差しを調整すると、乾燥を和らげる効果があります。

冬場は加湿器を使う

冬は空気が乾燥し、ひび割れが特に起きやすい季節です。木材に適した湿度は40~60%とされており、この範囲を保つことで乾燥を防げます。加湿器を使うと、家具だけでなく人にも快適な湿度が保たれるため、風邪予防にも役立ちます。

エアコンの風に注意

エアコンの風が直接家具に当たると、急激に乾燥が進みます。設置場所を工夫して、できるだけ風が直接当たらないようにしましょう。

天然木の家具には、ひび割れだけでなく、ひとつひとつ違う味わい深い模様もあります。これは製造上の欠陥ではなく、天然木ならではの個性であり、家具の魅力のひとつなんです。そんな自然の表情を楽しみながら、大切に使っていきましょう。

節(ふし)

木の表面に見られる「節」は、木が成長する過程で枝の根元が幹に残った跡のことです。この節の部分は、ほかの部分に比べて割れやすいという特徴があります。ただし、定期的にオイルや蜜蝋を塗ってお手入れをすることで、割れを防ぐことができます。
*ただし、木材にラッカーやウレタン塗装が施されている場合は、オイルが浸透しないため、この方法は適しません。

虎斑(とらふ)

オークやビーチなどの木材に見られる「虎斑」(とらふ)は、虎の縞模様に似た独特の模様です。一見するとしわやムラのようにも見えますが、これは木材の繊維の流れによって自然にできるもので、天然木ならではの個性と魅力のひとつです。
また、この模様は光の当たり方によって表情が変わり、美しい輝きを放ちます。そのため、家具や内装材では特に珍重されていて、高品質な天然木製品の特徴としても注目されています。

さいごに

お気に入りの家具に傷やひび割れができると、気になってしまうこともあるでしょう。特に、自分でつけてしまった傷は、つい目がいってしまうものです。でも、大丈夫! 適切なお手入れをすれば、問題なく使い続けられます。自分でケアをすることで、家具への愛着もいっそう深まるはずです。天然木の家具は、丁寧にお手入れをすれば、美しい経年変化を楽しめ、長く大切に使い続けられます。傷もその家具の歴史や個性のひとつ。あたたかく見守りながら、大切に育ててくださいね。

バナー撮影/よねくらりょう
アートディレクション/小橋太郎(Yep)